ヨシオクボ(yoshiokubo)の2023年春夏コレクションが発表された。

「人魂」の表現

ヨシオクボが今季のテーマとしたのは、「HITODAMA(人魂)」。漆黒の夜空をゆうらり、ゆらりと浮遊するアレである。この火の玉は古来、死者の肉体から離れた魂とされ、いわば不可視の対象たる人の魂の形とでもいうことができる。

ならば人魂を衣服で表現するとは、身体の境界を、皮膚を超えて拡張することにほかならない。用いたのは、色鮮やかで透明感のあるテキスタイル。それを、スポーティなジャケットやシャツへと仕上げてゆく。シルエットは、身体そのもののラインを大きく超えてオーバーサイズだ。さながら遊離する表皮であるかのごとく、シアーなオーバーサイズジャケットは身体を半ば覆いつくし、半ば透けて見せる。

シアーな素材が中心ということは、そこで複数のウェアのレイヤリングが自然に実現される。複数のテキスタイルを、色彩を重ねてゆくさまは、日本の伝統的な正装である十二単から着想を得たという。日本の伝統文化をスポーティなスタイルへと昇華する、ヨシオクボらしい表現が見てとれる。

人魂というややもすれば陰鬱に陥りかねないテーマながら、色彩は明るくヴィヴィッドとすることで、スポーティを軸とするテイストと違和なく馴染ませている。ブルーやパープル、レッド、オレンジなどの力強い彩りを中心に、随所にブラックやブラウンを取り混ぜた。