ヴェトモン(VETEMENTS)の2026年春夏コレクションが、2025年10月3日(金)、フランス・パリで発表された。
コンクリートの空間、むき出しの電球線、犬の鳴き声など、不穏なムードの演出から始まった今季のヴェトモン。緊張感が漂う中、強烈なストロボの点滅とともに、挑発的なルックを纏ったモデルたちが姿を現した。
今季のテーマは「仮面性」。多くのルックで、前と後ろで見え方が全く異なる服を提案している。たとえばデニムパンツは、前面はしっかりと布で覆われているが、背面は透明のビニール素材で切り替えられ、アンダーウェアが見える仕様に。
規律を感じるスーツ生地のロングスカートやドレス、シャツなども同様にバックが大胆に開いており、歩くとストッキングや臀部が露出される構造になっている。このようにして、表向きは礼節ある装いを保ちつつ、裏側で隠された欲望を見せる手法が反復された。
コートやジャケット類には、インサイドアウトの仕掛けが。フォーマルなトレンチコートは、後身頃の一部をライニングで切り替えているのが面白い。テーラードジャケットも、背面の生地がめくれ、本来表に出るはずのないライニングが露出するデザインになっている。
メンズ・ウィメンズに関わらず、シルエットはタイトな印象だ。タンクトップやTシャツ、ポロシャツなどはクロップド丈に仕立てられ、ウエストから素肌を覗かせて。ツイードスカートは臀部の見えるマイクロミニ丈、あるいはショーツにアレンジし、エレガントなスタイルの中に官能性を匂わせた。
ディテール面では、襟のデザインがユニーク。トラックジャージやフーディにはネックピローのようにふっくらとした襟が取り付けられ、カジュアルなポロシャツはファー素材の襟でラグジュアリーなムードにアップデートされている。レザージャケットには、帽子と襟を金具で繋ぐことで写真撮影や視線から身を守るような「プライバシーカラー」を採用していた。
コレクションのフィナーレには、喪服を思わせる真っ黒のドレスに身を包み、涙を流す未亡人風のモデルが登場。2025年春夏シーズンのラストで登場した「逃げる花嫁」のルックの続編としてコレクションに物語を添えた。