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ドイツの気鋭ラース・クラウメ監督にインタビュー - “勇気をくれるノンフィクション映画の主人公たち"|写真5

ただここ直近2本が、“戦後ドイツ”という類似内容が連続したのは、前作『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』が、僕に大きな影響をもたらしたからなのだと感じています。

その作品は、西ドイツを舞台にした物語だったのだけれど、僕はその中のフリッツ・バウアーという1人の検事に非常に引き込まれてしまって。

その映画の後、僕はもともと持っていた『僕たちは希望という列車に乗った』の原作を手に取って今回の作品に着手したわけだけれど、この作品はご存知の通り東ドイツを舞台にした物語。おそらく僕は、“戦後ドイツ”の発展(※)を、東と西の双方から描きたかったのかもしれないですね。実際に前作と本作を二本立てで上映してくれたら素晴らしいものになると思っています。

『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』
第2次世界大戦後の西ドイツが舞台。海外へと逃亡したナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンの捕獲作戦を実現へと導いたドイツ人の検事長フリッツ・バウアーにスポットを当てた実録ドラマ。

ラース・クラウメにとっての監督業

ドイツの気鋭ラース・クラウメ監督にインタビュー - “勇気をくれるノンフィクション映画の主人公たち"|写真17

クラウメ監督は、写真家のアシスタントからキャリアをスタートしたそうですね。そこからどんなきっかけで映画監督の道へと進まれたのでしょう?

僕は、写真家のアシスタントを経て映画学校に入学したのですが、僕のクラスでは「カメラ」「監督」「脚本」というようなコースを選択することが出来たんです。

ところが僕がもともとカメラの知識があっただけに、周りからは“じゃあ君はカメラだね”なんて勝手に圧をかけられてしまって(笑)最初ものすごい勢いで「カメラ」のコースに入れられそうになってしまったんですよ。

ドイツの気鋭ラース・クラウメ監督にインタビュー - “勇気をくれるノンフィクション映画の主人公たち"|写真1

ただ僕がそもそも映画学校に入学したのは、自分のできないことを学ぶためだったし、脚本とか演出とか自分の不得意な領域に足を踏み入れてみたかったんですよね。それにあまりにも周りに「カメラ、カメラ!」なんて言われるから、それを押し返してみたくなって「監督」コースを選択したことが、今の僕へと繋がっているというわけです(笑)

ただドイツでは、やはり監督志望者が多いから、校内でも周りと常に競争意識を持たなければならなかった。けれど監督業に実際に就いてみると、もっと戦いの世界だったので、あの時頑張ってしがみついてよかったなと思っています。

実際に監督業をされてから経験した一番大きな挫折は?

それは僕にとって、すごく簡単な質問です(笑)僕の一番の挫折は、かなり順調に進んでいたキャリアの中で、友達たちと制作会社を作った時期に当たります。その当時、素晴らしいキャストが揃った大規模なSF作品を手掛けていたのですが、完全な失敗作に終わってしまって。膨大なお金も費やしてしまったし、会社も潰れてしまって、すごく辛い時期を過ごしました。

ドイツの気鋭ラース・クラウメ監督にインタビュー - “勇気をくれるノンフィクション映画の主人公たち"|写真16

そこからどのように乗り越えられたのでしょう?

そういう辛い状況に陥った時こそ、いったん自分を冷静に見つめ直して、自己批評を行ったのです。“一体何がいけなかったのだろう?”って。

そうやって分析する時間を設けたことで、僕は作品自体はすごく良かったのだけれど、自分の脚本が未熟だったという答えに辿り着けて。そこからアメリカに渡った僕は、ロバート・マッキーという素晴らしい脚本の先生のセミナーを受講して、自分の脚本スキルを磨くことに注力することができました。

その後に執筆したのが、先にも述べた『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』。実際に仕事に復帰するのは、少し大変なこともあったけれど、この自分を見つめ直す時間を設けられたのは、僕にとって必要なことだったのだと感じています。

ドイツの気鋭ラース・クラウメ監督にインタビュー - “勇気をくれるノンフィクション映画の主人公たち"|写真3

そんな困難を乗り越えながらも感じるクラウメ監督にとって“映画制作の魅力”とは?

映画制作というのは、僕にとって本当に“ファンタスティックな仕事”。僕の場合は、脚本・監督・編集を手掛けているから、それぞれの現場で違った楽しみが転がっているんです。

例えば、脚本を書くときは、1人で執筆をすすめるのだけれど、家族の笑い声が聞こえるリビングで書くときもあれば、書斎にこもって一日中読書を楽しみながら書き進める時もある。そしてその生活にちょっと飽きてきて、“誰かに会いたいな”なんて思い始めるころには、映画の撮影がスタートして、毎日パーティーが始まるわけ!(笑)

何か月もの間、沢山の人たちと映画を撮る時間は、僕にとって夢のようなひと時。そして自分が書いたものの為に、皆が現場に集まってくれるというのも、言葉にはできない最高の気分にさせてくれるのです。

ドイツの気鋭ラース・クラウメ監督にインタビュー - “勇気をくれるノンフィクション映画の主人公たち"|写真11

それから、“そろそろお腹いっぱいになってきたな~”って頃に現れるのが、映画の編集作業。これは少人数の作業なので、皆僕の好きなように放っておいてくれるから、気軽に仕事ができる楽しさがあります。

もちろんアメリカのハリウッドのようなマンモス級の作品だと、こうはいかないだろうけど、僕の場合はこうやって自由気ままに励むことが出来るし、それが至福。誰にもコントロールされない映画制作というのは、僕にとって本当に楽しさで溢れているものなのです。

(※)戦後ドイツ史についての補足
第二次世界大戦の敗戦によって、ドイツは東西で分裂。資本主義国家として西ドイツが、社会主義国家として東ドイツが建国された。だが境界こそ設けられたものの、戦後のドイツの発展の上で、両国民たちが共通して求められていたのは、かつてドイツを支配したナチス政権との決別。『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』では、まさにナチス政権配下にいた親世代の西ドイツの物語、そして『僕たちは希望という名の列車にのった』では、これからの新しい時代を生きる東ドイツの子供世代のストーリーが描かれている。

作品情報

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』
公開日:2019年5月17日(金)
監督:ラース・クラウメ
原作:ディートリッヒ・ガーストカ「沈黙する教室」※アルファベータブックスより4月発刊予定
出演:レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツ、ヨナス・ダスラ―、ロナルト・ツェアフェルト、ブルクハルト・クラウスナー

©Studiocanal GmbH Julia Terjung

Photos(18枚)

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