ヨーク(YOKE)の2025-26年秋冬ウィメンズ&メンズコレクションを紹介。
今季ヨークが着目したのは、写真家をはじめ、多彩な分野において活躍したアーティスト、マン・レイ。光と影を駆使して瞬間を切り取った写真の独特な撮影技法や遊び心、シュルレアリスムのオブジェ作品に見られる“違和感”をインスピレーション源に、夢幻的で異質な美しさをコレクションに投影した。
注目は、マン・レイが採用した写真技法を思わせる抽象的な模様のウェア。印画紙などに直接物を置いて光を当て、影絵のような画像を生み出す「レイヨグラフ」や、ネガフィルムやポジフィルムの露光中に光を過度に当てることで画像を反転させる「ソラリゼーション」といった、光と影の作用により生み出される超現実的な世界観がプリントやニットの編地に落とし込まれている。
落ち感のあるレーヨンのブルゾンやシャツには、花や人物、もしくは手などの身近なものをモチーフにした絵柄をインクジェットプリントであしらい、影絵のように神秘的な佇まいに。ヨークで定番展開している、柔らかなスーパーキッドモヘアのジャカードニットにも、光と影が重なり合うようなグラフィックを配し、マン・レイの1920年代の映像作品にオマージュを捧げた。袖を折り返した部分のみ、ぽっかりと色が変わっている影絵のようなセーターも登場している。
写真作品だけでなく、《贈り物》や《破壊されるべきオブジェ》など、マン・レイのオブジェからインスパイアされたウェアも登場。鋲付きのアイロンや目の振り子が揺れるメトロノームなど、日常的な道具に違和感を付与し、「通常の世界の見え方」から外れた視点をもたらすような作品からアイディアを得た。
たとえば、カーゴパンツは米軍や仏軍など異なるルーツのミリタリーウェアを解体し再構築することで、一見見慣れたカーゴパンツながらも実はアンバランスさを内包したボトムスに。ハリントンジャケットをベースにしたブルゾンにも、L-2Bを解体したパーツを組み合わせて意図的にいびつさをプラスしている。途中まで襟が埋め込まれたテーラードジャケットや、縮絨させた部分と防縮ウールの組み合わせにより、アイロンを押しあてたような痕跡を残したセーターなど、さりげなく“いつも見ているものとのずれ”を配したアイテムも展開される。
ムラのある色味やシボ、起毛など、平面的でなく奥行きのある素材使いにも注目だ。ところどころ灼けたような風合いのボアコートやブルゾンは、ジャカードやプリント加工によってヴィンテージ感を演出している。ヌバックのカバーオールジャケットは、革にやすり掛けを施してわずかに起毛させることでビロードのようなテクスチャーに仕上げた。
また、ひび割れが表情豊かなムートンのブルゾンや、柔らかなレーヨンの落ち感を残したコーデュロイのウエスタンシャツ、3色のファーをミックスしたカーキのモヘアカーディガンなど、どこか余韻を残していくような風合いのウェアが散見された。