ディオール(DIOR)の2026年春夏コレクションが、2025年10月1日(水)、フランス・パリにて発表された。
「Do you dare enter the House of Dior?(あなたはディオールに入る勇気があるか?)」会場中央の巨大スクリーンにこのメッセージが映し出され、ジョナサン・アンダーソンによる初のウィメンズコレクションが始まった。
ディオールの世界に足を踏み入れるには、その歴史への深い共感、メゾンの言語を解読しようとする意志、そのすべてをひとつの箱に収めるための確固たる決意が必要だ。ジョナサンからの挑戦状とも取れる冒頭の言葉は、同時に彼のヴィジョン──メゾンの伝統にオマージュを捧げつつ、新時代へ向けて再構築し、ひとつにまとめあげる──をも明確に映し出している。
2025年6月に発表されたメンズコレクション同様、コレクション全体を通してメゾンの歴史に立ち返るようなルックが散見された。ムッシュ ディオールの1947年のデビューコレクションで登場し、時代を超えて愛されている名作「バー」ジャケットは、ウエストから広がる花びらのようなシルエットはそのままに、メンズウェアのファブリックで再解釈。鋭角的に張り出したフォルムのスカートが特徴的なデイ・ドレス「シガール」は、建築的な骨組みを活かしつつ、センシュアルなレースでナイトウェア的な官能性を引き出した。
さらに、1949年オートクチュールコレクションで発表された、花びらのようなパーツが重なる「ジュノン」ドレスはホルターネックスタイルにアレンジ。パネルを重ねてボリュームを出した「デルフト」ドレスの構造はカーゴスカートに、「カプリス」ドレスの優美に流れるシルエットはデニムパンツに落とし込まれるなど、オートクチュールのヘリテージをカジュアルに昇華したピースも登場した。
もちろん、ジョナサン・アンダーソンらしいエッセンスも随所に差し込まれている。編み込みディテールを配したひょうたん型のドレスは、実験的なフォルムを得意とするジョナサンならではのピース。ピークドラペルのピーコートは、硬さのある生地に折り目を入れることで、彫刻的なシルエットを形作っている。また、ジョナサンがアイルランド出身であることにちなみ、タータンチェックに彩られたタイ付きブラウスやミニスカートも登場した。
今季のキーピースとして繰り返し提案されたつば広ハットは、ヴィクトリア朝時代の航海用帽子から着想を得たもの。コレクションにダイナミックなアクセントを加えるとともに、メゾンが次のフェーズへと進む高揚感、新たな船出への期待感を高めた。