ヴェルサーチェ(VERSACE)の25-2026年秋冬コレクションは、27年間にわたりヴェルサーチェを率いてきたドナテラ・ヴェルサーチェ最後のシーズン。自分らしくルールを破り、それでいてヴェルサーチェのDNAには忠実に従って、メゾンの歴史を詰め込んだ。
ショーの幕開けを飾ったのは、“アートを纏い、自らがアートになること”をコンセプトに仕上げたコートやドレスの3ピース。ヴェルサーチェ ホームが展開するインテリアやテキスタイルなどに着想を得て、まるで布団のようにふっくらとした素材感のキルティングに、豪華絢爛なバロック調の「バロッコ」プリントを採用している。
続くメンズのレザーやウールのロングコートなどは、彫刻のように力強いフォルムに。いずれも、「バロッコ」柄をあしらったシルクの裏地を合わせており、厳格さとあわせて、シルクが呼び込む官能的なムードも感じ取ることができる。
メンズと同様に、ウィメンズのテーラードアイテムにもパワフルなシルエットを採用。シグネチャーであるスクエアショルダーを採用し、一部にレザーをあしらいアクセントをプラスした。加えて、メゾンが繰り返し提案してきたアワーグラスシェイプのタイトなジャケットやワンピースも目を惹いた。
やがて、スタッズをあしらったシリーズが立て続けに登場。1991年秋冬コレクションに登場したスタッズデザインとV字型ポケットを踏襲し、ロングコートやショートジャケット、ワンピースなどの襟やポケットに繊細に敷き詰めた。
かつて、創設者のジャンニ・ヴェルサーチェがバレエ衣装を手掛けていたことにちなんで製作されたドレスやスカートも要チェック。ここまでメゾンらしいパンク要素が感じられるルックが続いていたが、フェミニンな雰囲気が漂い始める。ふっくらと盛り上がるスカートには、光沢感のあるシルクプリントや、無機質でありながらまるで液体のように柔らかに動くメタルメッシュ素材が用いられている。
また、終盤には、「バロッコ」柄をはじめとするアーカイブの生地を細かく編み込んだアイテムが盛り沢山。ストリップ状にカットした表情豊かなドレスやセーター、スカートには、職人の卓越した技術だけでなく、メゾンの歴史までふんだんに盛り込まれている。
今回のコレクションで終始通して登場していたプリントは、ブランドが大事にしてきたスカーフ使いを改めて強調するものだ。野生動物のイラストと華やかな装飾をコラージュした「ヴェルサーチェ・サファリ」や新古典主義の彫像をモチーフにした「ホール・オブ・スタチューズ」といったプリントをシャツやタイツ、ネクタイなどに取り入れている。