アキラナカ(AKIRANAKA)の2025-26年秋冬コレクションを紹介。テーマは、「Wandering colors」。
抽象表現主義を代表する画家、マーク・ロスコの作品からインスパイアされた今季。デザイナーの中章は、3色で構成された有名絵画『マルチフォーム』が生み出される前、具象から抽象へと移り変わる“トランスフォーム期”の作品に着目。色彩が生む奥行きや、いきいきとした生命感と静寂に包まれる沈黙のコントラストを取り入れ、クラシックなディテールをモダンに昇華させたコレクションを展開する。
コレクション全体を通して、衣服を構成するクラシカルなディテールを具象と捉え、それを抽象化することで新たなバランスを生み出しているのが特徴的。アースカラーのジャージードレスは、身頃をあえて崩し、下に垂れるように伸ばすことで流動的なシルエットを演出した。
襟付きのジャケットはなめらかなギャザーをよせ、マニッシュなコートの襟元はくったりと折り返すことでアシンメトリーなラペルへと変化させた。いずれも衣服の既存の型から離れ、ボディに寄り添うようなシルエットへと変容し、斬新なエレガンスを追求している。
今季のファブリックには、中がマーク・ロスコの絵画鑑賞時に感じた“人間性”を反映。下層に仕込んだ色彩が表面に滲み出ることにより、表層が美しく彩られる「アンダーレイヤー」という手法を用いた。表層の水色から、ベージュやネイビーなど多彩なカラーが透けて見えるチェスターコートがその最たる例だ。
カラーパレットは、ブラックやネイビー、グレー、ホワイトといった、アキラナカらしい落ち着いた色味が主軸。時折、ホワイト・水色・グレー・ブラックが彷徨うように混ざったジャカードニットや、イエローの襟付きシャツ、ボルドーのコートなどが、コレクションに繊細な彩りを与えていた。