エスロー(ESLOW)の2023年秋冬コレクションが発表された。
今季のエスローの着想源となったのが、20世紀イギリスの彫刻家バーバラ・ヘップワース(Barbara Hepworth)だ。穴のあいた、有機的な造形の彫刻作品などを手がけるヘップワースは、彫刻を通して「人と人の優しい関係、また風景(自然)と人の精神的な関係」を表したのだという。抽象的なフォルムで仕上げられたその作品は、だから、ある種の優しさを湛えている。
ヘップワース作品に誘われて、エスローがそのコレクションで表現するのは、優しくも洗練された佇まいだ。たとえばロングコートは、柔らかなウール素材を用いつつ、すっと縦に落ちるシルエットに。フロントには、ラペルの下にパネルをあしらうことで、防寒性を高めることも、折り返してドレープ感を出して着用することもできる。
衣服と人との優しい関係性と言ったとき、そこに挙げられるべきは、温かみのあるニットだろう。コットンニットのプルオーバーやカーディガンは、毛足の長いシャギー素材で、ふんわりとした質感に。また、アルパカを用いたニットは、ふんわりとボリュームのある糸を用い、通常はポロシャツなどに用いられる鹿子編みで大きく編み上げ、柔らかく、凹凸に富んだ表情に仕上げている。
ヘップワースが自然と人の関係について言及したように、今季のエスローは自然を彷彿とさせるモチーフを随所に用いている。ニットやパンツにのせた、氷と大地を彷彿とさせるグラデーションは、その一例だ。また、ワンピースなどには手染めを施し、ネイビーやブラウンを基調にムラのある風合いを表現した。
今季は、これまでも手がけてきたメンズアイテムを、いっそう充実して展開。たとえばMA-1ジャケットは、ショート丈とボリュームのあるスリーブで丸みを帯びたシルエットに。中綿は中空のため、軽快ではあるものの保温性の高いものとなっている。また、テーラードジャケットにはベンツを深く設け、シャツはオーバーサイズに、フロントとバックで丈に差をつけるなど、上品でありながらも抜け感のある雰囲気を漂わせた。