フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)の2024年春夏コレクションが発表された。
今季のフミト ガンリュウは、2つのラインから構成される。メインレーベル「Practical design」と、レッドレーベル「Practical artworks」である。すなわち、衣服における造形性と機能性の平衡点を見出す「ニュートラル」を、メインレーベルがさらに推し進めるのならば、レッドレーベルはこうした平衡点から沸きたつような衝動性を具現化することで、ブランドに底流する「ニュートラル」の相対化を試みてゆくものだ。
ここで、この「ニュートラル」を振り返っておこう。そのために、2022年秋冬のテーマ「ホメオスタシス」を思い起こしたい。ホメオスタシス=恒常性とは、生物が自身の状態を一定に保つという性質である。たとえば人が暑い空間に身をおいたとき、暑さが体温を上げようとするのに対して、発汗などによって体温を元に戻そうという動きが生じ、いわゆる平熱が保たれる。翻ってフミト ガンリュウの「ニュートラル」とは、人を取り巻くものごとに対して示される、柔軟な適応性を仄めかすものだといえよう。
変化してゆく現代に、いかに適応するか。衣服はその応答にほかならない。したがって衣服は、つねに「プラクティカル(practical)」なもの、実用的な、実践的なものである。メインレーベルは、このような衣服のプラクティスを、造形性と機能性の平衡のうえに探るものだ。機能性といったとき、それは登山用のダウンウェアに見るような、日常生活においては過剰ともいえる高い機能を指すのではない。一方で造形性も、着心地といった衣服としての役割が抜け落ちる、いわゆるアヴァンギャルドなデザインではありえない。
だから、フミト ガンリュウのウェアにおいては、日常に適応する機能性が、衣服としての造形性と、無理なく溶け合っている。たとえば、素材には適度な撥水性を持ったファブリックを主に採用し、カラーはブラックやグレーといった無彩色が基調。ガウンは気負いなく羽織ることができるフロントデザインで、レインコートのような完全な止水性とは異なる。ブルゾンは、フードをなくすことでノーカラーのミニマルな佇まいへと昇華されている。あるいはサルエルパンツは、膝の部位に大きくギャザーを寄せることで、立体的な造形性と、脚を動かしやすい機能性を兼ね備えた。
一方、レッドレーベルは、造形性と機能性の抑制された均衡を前提としつつも、より力強い表現性を特徴としている。ダイナミックなシルエットと立体的なパターンをベースとしつつも、デザインはアシンメトリックに。フード付きコートは、ダイナミックなスリーブの左右非対称性と力強い配色が、強烈な異質さをもたらす。ざっくりと編みあげられたプルオーバーニットは、ヴィヴィッドなネオンカラーを取り入れることで、あたかも光を発するかのような鮮やかさを示している。
こうした強烈な印象は、フェノメノン(PHENOMENON)とのコラボレーションアイテムにも見ることができる。ダイナミックなシルエットのモッズコート、絶妙なアリンメトリーを取り入れたジャケットなどには、フェノメノンの大胆なカモフラージュ柄を取り入れるほか、スリーブにボリュームを持たせたデニムジャケットなども用意した。