展覧会「深瀬昌久 1961-1991 レトロスペクティブ」が、東京都写真美術館にて、2023年3月3日(金)から6月4日(日)まで開催される。

深瀬昌久、日本初の大回顧展

深瀬昌久(ふかせ まさひさ)は、「私写真」の先駆者として活躍し、 1960〜70年代の日本写真界で重要な役割を果たした写真家だ。1934年北海道に生まれた深瀬は、上京後、60年代初期より写真作品を多数発表。自らの私生活を深く見つめる写真によって独自の位置を占めるようになり、その視点は70年代に「私写真」として写真家たちの主要な表現のひとつへと展開していった。

深瀬はその写真作品において、自身の妻や家族といった身近な存在にカメラを向け、自らのプライベートを露わにしつつ、自己の内面に潜む狂気へと意識を深めている。そこには被写体に対する愛情とユーモラスな軽やかさが溶けあっており、これが深瀬の作品を独自のものとしている。

展覧会「深瀬昌久 1961-1991 レトロスペクティブ」は、深瀬昌久の全貌を紹介する日本初の大回顧展。初期作品「遊戯」から、深瀬の妻・洋子を被写体とする「洋子」、自身の家族を撮影した「家族」、そして晩年に手がけた「私景」や「ブクブク」など、主要な作品を一堂に集め、活動の足跡を時系列にたどってゆく。

妻・洋子を撮影した代表作「洋子」

深瀬の軌跡をたどるうえで欠くことができないのが、妻・洋子を被写体に、約10年の歳月をかけて撮影されたシリーズ「洋子」だ。深瀬は、60年代にはふたりが暮らした埼玉の草加松原団地を舞台に、70年代には旅先の北海道や金沢、伊豆などで洋子を撮影している。本展では「洋子」から、《無題(窓から)》を初出品。これは、1973年の夏、1年間にわたって洋子を撮るという決意のもとで撮影された作品であり、そこにはユーモラスな軽やかさと被写体への愛ばかりでなく、どこか過剰な演出が入り混じっている。

身体とイメージ

また、深瀬の作品には、現代の人びとがスマートフォンを用いて撮影する「セルフィ」に似た身体感覚を見てとることができる。上京後30年間で移り住んだ場所を再訪した「歩く眼」、風景のなかに自身の身体の一部を写り込ませる「私景」、そして自宅の湯船の中に潜った自身の姿を撮影した「ブクブク」などからは、カメラと戯れつつ、自らの身体とイメージを一体化させる深瀬ならではの表現にふれることができるだろう。

展覧会概要

展覧会「深瀬昌久 1961-1991 レトロスペクティブ」
会期：2023年3月3日(金)〜6月4日(日)
会場：東京都写真美術館 2階展示室
住所：東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間：10:00〜18:00(木・金曜日は20:00まで)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日：月曜日(5月1日は開館)
観覧料：一般 700円、学生 560円、中学生・高校生・65歳以上 350円
※日時指定予約が可能
※小学生以下、都内在住・在学の中学生、障害者手帳の所持者および介護者(2名まで)、年間パスポートの提示者は無料
※内容は変更となる場合あり(最新情報については美術館ホームページを確認のこと)

【問い合わせ先】
東京都写真美術館
TEL：03-3280-0099