ロエベ(LOEWE) 2023年春夏メンズコレクションが発表された。
<テクノロジーと自然の融合>を大きなキーワードに掲げた今シーズン。一見堅苦しい内容に見えるかもしれないが、ロエベを率いるジョナサン・アンダーソンの実験的な手法は、とんでもなくユニークで、──そして大胆だ。
有機物の象徴として、最も明確に表現されていたのは、一連の衣服やシューズに植えられた“本物の草”。パウラ・ウラルギ・エスカローナとのコラボレーションによって生まれたこの産物は、パリ郊外にある特設のポリトンネルで、20日間かけて理想的な状態まで成長させたリアルな草が用いられているという。
もちろん生きている植物なのだから、衣服の上でも“水やり”を忘れずに。実際に青々と草が茂るスウェットパンツやフーディーには、“水の痕跡”が残るなど、今季ならではのユニークなお手入れ方法も伺うことができる。
そんな自然の対照物である、もうひとつのキーワード<テクノロジー>は、私たちの日常に転がる身近なモノから着想を得たようだ。イエローやブラックのレザーコートと同化しているのは、スマートフォンやUSB、イヤフォンといったテック用品のモチーフ。またワイヤレスイヤホンの収納ケースのようにも見える、超マイクロサイズの未作「パズルバッグ」も、それらと一緒に転がっているのも面白い。
テクノロジーそのものを、衣服に落とし込んだピースも登場した。顔半分を覆い隠すマスクや、ロングコートに広がるのは、スマートフォンを連想させる液晶画面。熱帯魚や鳥の群れ、口づけをするカップルの姿といった誌的な映像が流れるが、それらに夢中になって眺める私たちは、服本来の素材やシルエットといったすばらしさに気付けないのかもしれない。それはまるで、現実世界でテクノロジーに夢中になるがあまり、本質的なことに目に入らない現代人の姿と、図らずも似ているようにも感じられる。
こうした大胆な表現方法を繰り広げてきた今季のロエベだが、コレクション全体を俯瞰してみると、アイテムひとつひとつはスタンダードなものばかりであることにも気づかされる。
ボトムスは、ブランドロゴ入りのスポーティーなレギンスがキーアイテムで、ふんわりと膨らむボンバージャケットやオーバーサイズのシャツを合わせた、緩急のあるスタイリングのシルエットが印象的。また色褪せた模様のフーディーには、パズルバッグを解体し再構築したようなワイドパンツが合わせられた。
毎シーズン注目を集める新作アクセサリーには、クロスボディ型の「パズルバッグ」をはじめ、春夏らしいナチュラル素材のトートバッグ、アナグラムを大胆に配したクロスボディバッグなどが登場。さらに足元には、パッド入りのボリューミーなスニーカーが展開されたほか、前シーズンに続き、フラメンコクラッチを再解釈したブーツの新色が追加された。