パリファッションウィークにて、メゾン マルタン マルジェラ(Maison Martin Margiela)の2012年春夏コレクションが発表された。
絨毯が敷き詰められたランウェイに最初に登場したのは、美しいシルク生地を即興で身に纏ったようなイブニングドレス。胸元のドレープやアシンメトリーの裾は、その無造作なシルエットがフェミニンな印象を強めている。
今シーズンは、大きなサイズの男性のワードローブから切り取ったピースを、そのマスキュリンなイメージを残しながら女性の体合わせて仕立て直した。ランダムにピックアップした生地で即興で作り上げたかのようなアイテム達は、アンダーウェアをフレームとして利用することで完成される。そして、本来洋服の下に隠されるべきその姿が、秘められたセクシャリティと共にくっきりと浮き彫りとなった。
一枚の布地がヌードカラーのボディースーツの上に粘着バンドで貼り付けられただけのドレスやスカートは、偶然に生まれるドレープや布の重なりが作り出すグラデーションが印象的。なめらかな上質なレザーも切りっぱなしで、コートやシャツも縫いしろが表に出るように仕立てられ、見る者に未完成であるがゆえの美しさを主張する。 あえて表側にほどこしたジッパーが構成する様々なアイテムは、ジッパーの開け具合によって様々な表情に変化させたり、ジッパーを外せば平らになる巧みなデザイン。
コンセプチュアルで静謐なコレクションの中で宝石のように煌めいていたのが、床に敷かれた絨毯をそのまま体に巻き付けたかのようなドレスやロングスカート。シルクの生地にスパンコールで模様が描かれ、シルクのフリンジがプラチナの輝きを放つきらびやかなドレスには、上からビニールの洋服のカバーがかぶせられた。白いコットンの洋服カバーも、切り取られテーラードベストの肩にかぶせられたり、そのままチュニックに仕立てられたりと、服作りの過程における脇役であるその存在が、洋服そのものとなって登場している。
女性の身体と洋服の関係性を追求し続けるメゾン マルタン マルジェラならではの、服作りというクリエーションの本質を問うコレクションとなった。