ハナエモリ マニュスクリ(Hanae Mori manuscrit) 2016-17年秋冬コレクションが、東京・渋谷ヒカリエで2016年3月15日(火)に発表された。
テレビの砂嵐のような音が響く会場、闇を背景に浮かぶ1輪の花。幻想的かつ厳粛な空間に誰もが心を奪われた。ファーストルックに登場したのは、ボルドーの構築的なプルオーバーニットとアシンメトリーなタイトスカートである。同様に非対称なシルエットが続くランウェイを彩ったのは、モノトーンやピーコックカラー。今季はブランドらしからぬ、控えめでメランコリーな色合いを提案し、その中に繊細なゴールドをアクセントとして投じた。
カラーのシンプルさとは相反するかのごとく飾られたのは羽ばたく蝶々のようなデザイン。1枚の布にドレープやギャザーを効かせたり、ねじることで蝶を形作り、ナチュラルに洋服を飾っている。女性性の華やかさを謳歌するように肩、フロント、そしてバックに…。時には溶けるように滑らかな素材を結んだだけのものもある。
レイヤードの遊びは、街の中で見る建築物を見るかのようにアーキテクチュアルだ。フラットなテキスタイルの狭間からは、ギャザーを寄せたシアーな素材や、流動的な毛足の長いフェイクファー、ふんわりとしたキルティング加工のテキスタイルが見え隠れする。
終盤に登場したデジタルプリントは、花柄は精巧なグラフィック、蝶は携帯のカメラで撮影した粗い画像がもととなった。闇と明を対峙させながら、有機的な動植物たちの息吹をもたらす。サテン、ウール、シルクなどテクスチャーは様々だが、シルエットは相変わらずエレガントを保ち続けている。
今季のコレクションのインスピレーション源となったのは、パリの中心に配された構築的な建物や草花。幻想的に表現し非日常と日常に訴えかける審美的なワードローブには、「無機物と有機物の融合」のドラマが繰り広げられていた。