ベースマーク(BASE MARK) 2023年春夏コレクションが発表された。テーマは“WIDE PICTURES”。

広角レンズを着想源に

着想源となったのは、写真レンズの分類の一種である「広角レンズ」。前シーズンのルック撮影時に、この広角レンズを使用したというデザイナーの金木志穂は、カメラを抑える構図によって、上下左右に伸びたり縮んだりする被写体に心をくすぐられ、次シーズン(つまり今シーズン)のアイディアが一気に膨らんだのだという。

こうして完成したコレクションは、会場作りから広角レンズの特徴を反映。レンズをモチーフにしたサークル型のランウェイを舞台に、“どこか歪みのある”ユニークなピースの数々が会場を席巻した。

“ホール”のある洋服

特徴的なのは、レンズを開いた瞬間を表現しているように、布地にホールを空けた個性的なウェア。ニットトップスの編地をほぐして丸いサークル型を描いてみたり、ポロシャツに無数の“裂け目”を作ってみたり、パンツの布地を大胆にカットしてみたり…。単体でも十分目を惹くピースだが、今季はその本来あるはずのない“穴”を埋めるように、レイヤードすることで、より複雑な表情を引き出しているのがポイントだ。

拡張されたディテール

とりわけ洋服のディテールを大きくデフォルメしたピースは、より“大きな歪み”を生み出す作用を持つ。例えば襟ぐりの拡大によって大きく右に傾いたTシャツは、異なるスリーブ丈・裾を持つTシャツを複数重ねることで、観る者のバランス感覚を混乱させる複雑な表情に。

またYシャツとネルシャツをドッキングしたようなピースは、襟元を極端に拡張させることで、まるで首が沈んでしまったような、ユニークなスタイルを作り上げているのも面白い。

バイアスカットを活かして

さらに今シーズンは、ブランドならではの斜めのカッティングもより拡張。コートは右側に伸びているようにバイアスカットを施し、アシンメトリースカートは片方が床を這うほど、鋭い角度を描いているのも印象的だ。

レンズをモチーフにした装飾

ラストを飾るのは、解体・再構築されたオーバーシルエットのトレンチコート。今季らしくディテールの拡張や、歪みが加えられた脱構築的なシルエットは言わずもがな、広角レンズをモチーフにした、今季らしいクリアビーズのアクセサリーが加えられている。このクリアな装飾は、シューズやコートのトグルとしても登場。ランウェイを彩るスポットライトを反射し、キラキラと光る煌めきをもたらしていた。