2011年10月20日、クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)が2012年春夏コレクションを発表した。「SIGNAL / NOISE」というコレクションのタイトルは、ダムタイプの「S / N」より引用した言葉。今回のコレクションは故古橋悌二が手がける「S/N」とは作風が大きく異なるが、その作品と出会ったデザイナーの森川マサノリの中では「死」という概念が更に深まり、死のアイコンである「骨」に着目するに至ったという。
ラストの一体を除いてすべて黒という、暗黒の世界。真っ白な骨がまるで生命を持ったかのように黒いドレスの上から体を包み込んだ。 骨はドレスの下からも浮き出したり、肩から突き出したり、さらにゲージになって、着る人間の存在そのものさえ閉じ込めた。ベビードールのミニドレスにも、スリットがセクシーなロングドレスにもからみつく骨。本来不動のものである骨を纏うことで、「有動(有機質)」になり、「生命性」そのものを表現した作品が、さらに来るべき未来の死をも連想させる。
破壊音のようなBGMがピアノの調べと日常の雑音に変わり、死の世界から現世へと引き戻された。そこに登場したのは木の根のような白骨に包まれた、純白のドレス。周りをトゲのある十字や黒のドレスで取り囲まれても、ゆるぎのない孤高の美しさを静かに称えていた。
森川は、語る。「もしかするとこのコレクションを『ファッション』として理解出来ない人も中にはいるかもしれませんが、その言葉のような想いを、言葉上の表現とは違う形で『トゲ』や『感情』としてこの作品に込めた。そういう意味では今回の『SIGNAL / NOIZE』は、本当の意味でのコミュニケーションとしてのファッションだと、僕は思っています」。
服作りというクリエーションと、ショーという総合芸術の本質の変化に疑問を投げかけ、新しい表現方法を問うた結果が、死と生の世界を行き交うショーとして結実した。