ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)の2026年春夏コレクションが、2025年9月28日(日)、イタリア・ミラノで発表された。
創設デザイナーが活躍するクチュールブランドが少なくなる中でも、常に第一線でモードの歴史を開拓し続け、ファッション界に計り知れない影響を与えたジョルジオ・アルマーニ。“モードの帝王”という異名をとり世界中から愛された彼が、コレクション発表のわずか3週間前、9月4日にこの世を去った。
アルマーニ自身が手掛ける最後のショーとなった今季は、単なるシーズナルな新作という枠を超え、偉大なる巨匠のキャリアを回顧するものに。彼が最後まで貫いた美学を静かに讃え、ひとつの章を優雅に締めくくった。
舞台は、アルマーニが生涯を過ごしたブレラ地区に佇むブレラ美術館。インスピレーションとなったのはジョルジオ・アルマーニの世界を象徴するふたつの地──モダニティと創造の鼓動が息づく都市ミラノと、火山岩と黒い大地、果てしなく広がる蒼海に抱かれた地中海の島パンテッレリアだ。
すべては流れるようにしなやかで、島を渡る風に身を委ねるように軽やか。衣服と人がひとつに調和する「純粋」の美──アルマーニが生涯大切にしてきたエレガンスが息づいている。柔らかな曲線を描くテーラードジャケット、豊かなドレープを織りなすサテンブラウス、あるいは風を孕むかのようにボリュームを持ったトラウザーが、身体を締め付けることのないリラクシングなシルエットを示す。
素材においても、柔らかなシルエットと溶けあう、しなやかなものを数多く見出すことができる。ドレスには繊細にして空気のごとく儚いオーガンザを、ショールカラーのジャケットには上品な光沢のベロアを、ゆったりとしたパンツにはしっとりと艶めくサテンを採用。レザーは繊細に編み上げられ、ソフトに身体を包み込むベストへと仕立てられている。
パンテッレリアの豊かな自然を思わせるカラーパレットが、コレクションにドラマティックな物語性を与える。砂浜のように穏やかでドライなニュートラルカラーから、次第に夜の海を思わせるダークカラー、そして宝石の輝きを纏ったトーンへ。フィナーレには、深いネイビーに煌めくスパンコールやラメを散りばめ、ジョルジオ・アルマーニのポートレイトを描き出したドレスが登場した。星空のような煌めきは、彼の生涯を静かに、華やかに讃えるようだ。