エズミ(EZUMi)の2026年春夏コレクションが発表された。テーマは、「Sculpting the Void:Less, but Better— 存在と構造、そして空白の美をまとう服」。
衣服を‟彫刻”として捉え、ミニマリズムへと舵を切った今季のエズミ。江角泰俊は、ドイツ人インダストリアルデザイナーのディーター・ラムスが提唱した「良いデザインの10原則」の中の最終項‟Less, but better”という考え方を核に、ドナルド・ジャッド、バーバラ・ヘップワース、リチャード・セラら3名の抽象彫刻家の作品性を取り入れた。
キーとなるのは、存在すること自体が最も美しく、雄弁であるという思考だ。あえて装飾をなくし、素材やシルエット、スタイリングに至るまで無駄を削ぎ落し、シンプルなデザインを追求した。
まず、美しいラインを描くアウターに言及したい。テーラードジャケットは、バーバラ・ヘップワースの空洞のある彫刻品からインスピレーションを受け、ウエストを絞ったフェミニンなシルエットに。またショルダー部分は膨らみを出し、バスト下はパニエのように裾にかけて広げ、女性らしい曲線美を強調しているのが印象的だ。
日本発テクニカルブランド・テクラー(TECLOR)との協働により生まれた、縫製を一切用いないモッズコートからも、ミニマリズムの精神を見てとれる。糸や針は使用せず、生地の接ぎ目の裏にテープを張り、超音波と熱圧着によって仕立てる‟圧着無縫製”を実現。シームレスな生地や構造はもちろん、流れるようなドレープの美しさと軽やかな着心地を叶える。
ドナルド・ジャッドの作品で見られる‟反復性”は、プリーツデザインに昇華。トレンチ生地のジレは、ダブルボタンを配したフロントとプリーツを施したサイドのコントラストが面白い。また、光沢感のあるMA-1やデニムジャケット、軽やかなシフォンブラウスなど、バリエーション豊かな生地にプリーツを採用し、彫刻のような立体感を表現している。
さらに前シーズンに続き、リーバイス(Levi's)の代表的なジーンズ「501」をリメイク。ユーズドデニムならではのダメージや風合いはそのままに、ハリ感のある素材のベストとパンツで再構築したロングジレとストレートパンツが揃う。