アワー レガシー(OUR LEGACY)の2026年春夏コレクションが発表された。
ブランド設立20周年を迎えるアワー レガシー。節目となる今季は、レコードやCDに例えるならば、表題曲やヒット曲をまとめた「ベスト盤」ではなく、あえて「B面」をテーマにコレクションを展開。アーカイブはもちろん、表舞台に出なかった試作や、未採用のアイデア、スタッフ間で交わされた冗談のような発想など、チームの軌跡と感性を掘り起こし、今の視点で再構築した。
ワードローブの鍵を握るのは、既成概念を揺さぶる“絶妙な違和感”。例えばメンズテーラリングは、クラシカルなジャケットをベースにしながらも、やや落としたショルダーラインや、手先が隠れるほどの長い袖など、身体の輪郭をぼかすようなルーズシルエットが散見された。
裾から姿を覗かせるインナーシャツや、ラフなニットといったレイヤードアイテムのほか、フルレングスかつ豊かなドレープのパンツなど、スタイリング全体からも自然体でカジュアルなムードが滲み出ている。
“違和感”は素材にも顕著だ。サテンシルクはあえて加工し、本来の艶やかさを抑えた乾いた質感に。ドレープの効いたシルクニットはアーシーなマーブル模様で編まれ、その柔らかな肌触りとは裏腹に、どこか素朴で野性的なニュアンスが漂う。さらに、レインジャケットのように見えるルックには、実は透け感と通気性を持つウールボイルを用いるなど、目に映る質感と素材のズレが多く仕掛けられている。
一方ウィメンズでは、メンズウェアの要素を取り入れた新たなフェミニニティを提案。カーキのワークジャケットを思わせるアウターや、タキシードのようなピークドラペルを備えたコートなどがその好例だ。
また、ギャザーで多くのシワを寄せたシャツや、ウエスト周りの生地を重ねたアシンメトリースカートなど、ねじれやズレを伴う構築的なデザインも印象的。端正なパターンをほんの少し崩すことで生まれる揺らぎが、スタイルに柔らかさと奥行きを与えている。
最後は、アワー レガシーの歩みを辿るようなモチーフに注目。死の象徴“モメント・モリ”のペイズリー柄は、アーカイブピースの写真をもとにシャツへ転写され、初期のコレクションに登場した“大天使(Archangel)”プリントは、ガーゼのような質感のワンピースTシャツとして再構築されている。
また、過去20年分の“怒れるファンレター”をジャージー素材に刷り込むなど、ブランドの歴史の中で生まれた声や感情さえも服の一部として昇華してみせた。