エトロ(ETRO)の2025-26年秋冬コレクションを紹介。テーマは、「エトロマグマ」。
生命が息吹く前ーすなわち、全てが形づくられる前の世界へと立ち返った今季のエトロ。デザイナーのマルコ・デ・ヴィンチェンツォは、原初の世界でも存在する“素材そのもの”に着想を得て、独自のクリエイションを展開。コレクションを通じて、神話・動物・宇宙・植物・言語など、未だ解き明かされていない創造の起源に迫り、謎を紐解く道筋を見出していく。
初めに、まだ形を持たないながらも、‟五感に訴えかける”ような素材に言及したい。グレーズ加工やラバーコーティング、エンブロイダリーと一体化されたプリントのファブリックは、平面でありながら奥行きを持ち、まるで時間や記憶が層を成して浮かび上がる地層のようだ。
アースカラーを軸に構成されたカラーパレットの中で、エトロのアイコニックなペイズリーとともに、神秘的なモチーフや植物のプリントが存在感をもつ。デニムには、韓国人アーティスト、マリア・ジョンとのコラボレーションによる花の刺繍が施され、クラシックなチェック柄のセットアップはボタニカル柄のレイヤードで寓話的な表現に変えられている。また、レザーバッグなどの小物にも花や植物が蔓延っている。
生き物のように躍動するシルエットも特徴的。つややかなサテンドレスは、ランウェイを進む度、水が流れるようにボディラインを描き出したり、ふわっと空気をはらむように広がったり…と多彩な表情を演出する。ブラッシュ加工されたウールニットには、不規則なカッティングやフリンジが施され、体躯に沿ったラインを際立てるより、“形が芽吹く瞬間”をそのまま投影していたように思える。
今季のテーマに冠した、燃え滾るマグマを表現するディテールも今季ならでは。特に顕著に表現したのは、ショー後半に登場したエネルギーに満ちたオレンジのカラーパレットだ。ハイネックノースリーブのドレスには、グラデーションを描くように大粒のスパンコールがあしらわれている。
カラーパレットは、ブラウンやカーキといったアーシーカラーからマスタードイエローやモスグリーン、そして星のように煌めくメタリックカラーまで、生物からインスパイアされた豊かな色彩を採用。ランウェイを豊かに彩り、観る者にエネルギーを与えていた。