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【ファッション×法律】そのカシミアは本物?ファッション業界の「素材偽装」と法律のカンケイ

昨年後半、超有名なホテルレストランが食品偽装を自主的に報告して社長が辞任するなど、食品偽装のニュースが連日話題になった。「偽装といえば」ということで、ファッション業界の「素材偽装」について思い出した人も多かったのでは?
少し前に、デパートやセレクトショップ、有名ブランドのセカンドラインなどで販売されていたセーターやストールなどについて、「素材偽装」が大きな問題になった。特に偽装が多かったのは、カシミアだ。何と、カシミアの流通量は生産量の約4倍。単純計算では、「カシミア」とされている商品の4分の3は偽物だ、ということになる。
ファッションの素材偽装は、なぜ起こるのだろうか。そして法律はどのように偽装を防止していて、安心してファッションを楽しむにはどうすれば良いのだろうか。「素材偽装」を巡るファッションと法律について、消費者庁への取材なども織り交ぜながら、法務博士の河瀬季と西村美香が解説する。

【ファッション×法律】そのカシミアは本物?ファッション業界の「素材偽装」と法律のカンケイ | 写真
cashmere.jpg photo credit: pontman via photopin cc

そもそもカシミアとは、中国のモンゴル自治区等を中心とする中央アジア諸国に生息するカシミア山羊の毛が原料。表面のゴワゴワした体毛の下にあるうぶ毛を、年に一度の生え変わりの時期にだけ刈り取ることができる。1頭から採れる毛の量はわずかマフラー1枚分という稀少性から、高値で取引される素材だ。

刈り取った原毛は、まず糸に加工され、生地となってテーラードに使用されたり、毛糸となってセーター等に製品化される。原毛は、細く長く白いほど良いとされる。なぜなら、長さ・細さ・白さによってランクが決まるからだ。

・細さ:細いほど、きめ細やかでしなやかな生地になる
・長さ:長いほど、ほつれにくく質の良い生地となる
・白さ:白ければ、いきなり染色できるので脱色の工程を経ない分糸が傷まない

そして、最高級ランクの一部を除き、ほとんどの原毛は中国国内で糸に加工される。その後、各国へ出荷されて製品化されたり、中国国内でそのまま製品化されて出荷されたりする。この各加工の段階でウールと混ぜられ、偽装カシミアが発生してしまうのだ。

また、一度生地や糸になったものの、製品化の後に余った切れ端等の繊維くずを集めてもう一度加工、脱色、染色を施した、「再生カシミア」なるものも存在する。数多くの加工工程を経るうちにカシミアの光沢や風合いが失われてしまうため、これはかなり価格が下がる。

つまり、低価格で提供されているカシミアには、ランクの低い原毛から加工されるもの、再生カシミア、偽装カシミアというバリエーションが存在する。前者二つは「本物の」カシミアである。

カシミアの「素材偽装」は法律違反?

中国国内などでウールが混ぜられた「偽装カシミア」など、ファッションの「素材偽装」は、まずは「家庭用品品質表示法(以下、家表法)」という法律で禁止されている。洋服の素材など、買う側から見て識別が難しい情報を、タグ(やネットショッピングの場合の品質表示)に正確に、つまり偽装せずに書くことを求める法律だ。

この法律より、「販売業者(など)」は、販売するファッション商品について、正確なタグを付ける必要がある。カシミアでないのにタグにカシミアと表示したら法律違反だ。

【ファッション×法律】そのカシミアは本物?ファッション業界の「素材偽装」と法律のカンケイ | 写真
セーター/私物 撮影/河瀬季

ちなみに、インポートの場合は、輸入販売時に日本の法律に従ったタグを付ける必要がある。だから上の写真では、本国で付けられたタグと日本で付けられたタグ、二つのタグが写っているのだ。

また、タグを付ける必要があるのは、上記通り「販売業者(など)」だけ。だからタグが外れた古着を、「個人」がネットオークションなどで売るのはOKだが、古着屋など「販売業者」が売るのはNGだ。

「カシミア」の限界~カシミアはどこまでカシミアか

しかし、「カシミアでないのにタグにカシミアと表示したら法律違反」と簡単に書いたが、そもそも「カシミア」とは、正確には何なのだろうか。例えば、カシミア山羊の毛であれば「カシミア」なのだろうか。「カシミア」について、CCMIという国際機関が定義を行っている。

・カシミア山羊の
・うぶ毛で
・ある程度以上細くて均一なもの

簡単に言うとCCMIはカシミアをこのように定義している(正確にはCCMIサイト内「カシミアの定義」 http://www.cashmere.org/cm/definition.phpを参照)。しかし、これは「法律」ではない。そこで、消費者庁の家表法担当の方に取材を行ってみた。

法務博士 河瀬季(以下「河瀬」):法律には「カシミア」の定義がないと思うのですが。
消費者庁 家表法担当者(以下「消費者庁」):特に定義はないですね。
河瀬:では、どういうものに「カシミア」とタグを付けたら法律違反なんでしょうか?例えばCCMIは定義を作ってるみたいですけど。
消費者庁:CCMIの定義はあくまで一国際機関の見解なので、法律的には、「一般的にカシミアと呼ばれているものがカシミア」というような説明しかできないです。
河瀬:そうなりそうですね。では、例えば「あの店で売られているカシミアセーターは偽物だ!」というような話があった場合、「偽物かどうか」をどう判断するんですか?
消費者庁:我々としては、検査機関に検査を依頼し、その結果から判断する、ということになります。

「そのカシミアは本物か」という検査を行う検査機関、なるものが存在するのだ。そして、少しややこしいが、以下のような構図になっている。

①消費者庁に依頼を受ける検査機関は、「JIS」という規格に則った検査を行う。
②カシミア検査に関するJIS規格は、ケケンという検査機関が行っていた検査を元にしている。
③ケケンは、CCMI公認の検査機関。
④CCMIは、上記のカシミアの定義を作った国際機関だ。

ということは、カシミアの定義を行っているCCMIが公認するケケンの検査方法を元にした企画に則った検査で「カシミア」と判断されるかどうか、となる。結局、CCMIの定義と実務上の「カシミア」の定義はニアリーイコール、ということになりそうだ。

商品名に「カシミア」はセーフorアウト?次のページへ続く>>

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