ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)が2022年春夏コレクションを東京・南青山にて2021年10月4日(月)に発表した。
二宮啓が今季目を付けたのは、陰影がもたらすノワール=黒。単純に“黒”という色を用いるのではなく、実態が見えない陰影の朧げな黒を主役とすることで、儚さをもたらすと同時に、逆説的に陰影があるからこそ感じられる確かな存在感、そこにある強さを強調した。
基本となる色にはベージュを採用した。掴みどころがないゆえに深みがあると、二宮が語るその色は、曖昧なニュアンスを助長する繊細なファブリックで表現される。リボンやフリルの無数の重なりが生む黒は、身体と連動して揺れ動き、一瞬として同じ黒はない。だからこそ、途方もなく神秘的だ。
チュールで身体を完全に覆う造形物のような服は、そのなだらかなシルエットの中に、ぼんやりと身体のラインを映し出し、柔らかい絞りで象られた球体が連なるドレスは、ふわふわと揺れて、例えようのない優しい影を作り出す。新たな表現として用いた総柄のブランドロゴは、力強さを加味する手段になっている。
服を成す軸には、あくまで厳格なシルエットが用いられている印象だ。コルセットのようなシルエットや、チュールを先端に踊らせるボンテージベルトがその好例。実態のない影が新しい黒をもたらす創造のための基盤には、あくまで律されたものの存在がなければならないのだろう。でなければ、存在の確実性は生まれない。奥深さを追求するためには、その根底にあるものを追求していかなければならないのだと、ある種服に対する深化を感じさせる。
そして、そのうえで生まれた今季の極限の美が、金属の線だけで完成した繊細すぎるドレスに宿っている。骨組みだけで完成されたドレスは、布で覆わなくとも、細い線が生み出すシルエットと陰影だけで服のエネルギーを伝藩させる。この上ない儚さと強さをもった、エレガントな1着だ。