アニエスベー オム(agnès b. homme)が2016年春夏コレクションを発表した。アートコレクターとしても知られるデザイナーのアニエスベー。今季もそんな彼女らしい、様々なデザイナー・アーティストとのコラボレーションが展開される。
まず現れたのが、パリとベルリンを拠点に活動するデザイナーJerome Pierreによるアイテムだ。近年、テクノロジーを駆使した作品を発表している彼は、ジェネレーティブアート(数学的、機械的、無作為的自立過程によってアルゴリズム的に生成・合成・構築される芸術作品)にインスパイアされた、デジタルなモチーフをデザインに採用した。その波打つ幾何的なモチーフは、大きく胸元にプリントして無機質さを強調したり、逆に小さい柄としていくつも並べることで、どことなく親しみやすさを付加したりと、アプローチを変えて。ネイビーやブラックなどのシックなカラーに、モダンなエッセンスを吹き込む役割も果たしている。
続いて、アニエスベーのショーおなじみのパフォーマンス。今回は、デニムのブルゾンやパンツをまとった、ヒップホップダンスユニットによるダンスパフォーマンスだ。それが終わると、ミニマルなスタイルからは一転、カジュアルなムードが漂い始めた。ステンカラーコートにクロップドパンツを合わせた、ベージュ一色のスタイルに始まり、シルエットにゆとりのあるホワイトのライダース、そしてフードのついたカラフルなジップアップブルゾンをメインにしたルックへ。特にフード付きブルゾンは、アーティストのIKONやJIM SHAWの描いたデザインを落とし込んだもので、カラフルでエッジィな魅力満載だ。
中盤からラストにかけては、色彩で遊びをもたせた、アニエスベー流伊達男ルックの連続だった。たとえばチェックのセットアップにはイエローのシャツでビビッドカラーを差し込み、ノーカラーのブルゾンをメインにしたルックでは、上下ともにライトブルーで彩る。鮮やかなアロハシャツを主役にした、リゾートなルックも現れた。どれも春夏のイメージを反映した、開放的なムードが特徴的だ。
さらにはレッドやブルーでまるごと彩られた、セットアップやタイも登場。比較的かっちりしたパリジャンのスタイルを、ある時にはまるでコメディ俳優のように隙のある印象へと押し上げる、ユニークさが目を引くコレクションとなった。