カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)の2026年春夏コレクションが発表された。
デザイナーのサカイカナコが今季着想源としたのは、自然あふれる故郷の風景や、自身の記憶の断片。刻一刻とさまざまに表情を変える広大な空や、川に反射する太陽のきらめきなど、日常に溶け込むふとした情景を捉え、ノスタルジックでありながら洗練されたコレクションへと昇華した。
象徴的なのは、サカイの祖母の下着が風に揺られてる光景から着想したというキャミソール。親しみを感じさせる柔らかな質感はそのままに、繊細なリブの入った生地と、細やかでメリハリのあるラインのレースを組み合わせることで、洗練された佇まいに再構築した。
カナコサカイを象徴するレースは、他のウェアでも存在感を放つ。今季は透明感のある総レース使いが目を引く一方、シンプルなフォルムに仕上げることで、スタイリッシュなテイストに引き寄せている。肩パッドを入れたジャケットやリラクシングなトップス、タイトスカートなどが好例だ。
サカイの実家で使われている壁紙の柄を落とし込んだ、クラシカルなパターンも印象的だ。モヘアレースを張り巡らせた襟付きカットソーは、裏側にラメ糸の編地を忍ばせ、模様が立体的に浮かび上がるよう仕立てた。また、ノスタルジックな柄をジャカードで表現したボウタイブラウスには、群馬の職人が手染めで仕上げた染色が不規則に広がっており、空や川の移ろいゆく色を想起させる。
目に留まるのは、力強さを感じさせるパワーショルダーと、重心を落としたリラクシングなフォルムのテーラードウェア。例えば、引きずるほどの丈を持つサテンジャケットは、ウエストがのぞくほど深いVラインで、ポケットやボタンの位置も低く設定した。ブーツカットパンツは、ストライプ生地をバイアスで使い、ローライズに仕立てることで、ソリッドな雰囲気を崩している。
サカイの記憶に残る現代アートに由来したディテールも随所に散りばめた。クリアビーズのアクセサリーは、ガラス作家・三嶋りつ惠のガラス彫刻《HALL OF LIGHT》に着想。球体や管状などの多様な形を連ねており、角度によって変化するきらめきを楽しめる。ジャケットやトラウザーズのポケットに配したボタンは、イサムノグチの彫刻作品《黒い太陽》からインスピレーションを得た。
カラーパレットは、ロニ・ホーンの水面のようなガラス彫刻に通じる、淡く柔らかなグリーンやホワイトが基調。そこにバーガンディーやブラックなどのカラーを差し込むことで、どこかシックなムードも漂っている。