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【インタビュー】鈴木亮平&宮沢氷魚 “愛とエゴ”誰もが胸に突き刺さる物語 - 映画『エゴイスト』

鈴木亮平、宮沢氷魚が出演する映画『エゴイスト』は、「愛とはエゴなのか?」という問いを巡る物語。劇中では、主人公が自分の恋人、そしてその母親との関わりの中で“愛とエゴ”について自問自答し、葛藤することになる。

“愛とエゴ”を巡る根源的な問いかけを、胸に迫る描写で描き出す『エゴイスト』。主人公の浩輔役を演じた鈴木亮平と、浩輔の恋人・龍太役を演じた宮沢氷魚に2ショットインタビューを実施した。映画『エゴイスト』の撮影を振り返り、作品を構築していく過程で感じたことや、自らの俳優像について、話を聞いている。

“愛とエゴ”の狭間を描く『エゴイスト』

鈴木亮平, 宮沢氷魚 インタビュー|写真1

映画『エゴイスト』は、どのような映画に仕上がっていますか。

鈴木:エッセイストの高山真さんが綴った自伝的小説『エゴイスト』を基にした作品です。僕が演じたファッション誌の編集者である浩輔を主人公に、その恋人となる龍太と、母親が織りなす物語を、“愛とはエゴなのか”という問いを軸に描いています。松永大司監督が即興を重視するドキュメンタリータッチの演出方法だったこともあり、よりリアリティの感じられる作品に仕上がっているのではないか、と感じています。

国内での反響ももちろん、「第16回アジア・フィルム・アワード」(AFA)へのノミネートなど、様々な方面から注目を集めていますね。その理由はどこにあると思いますか。

鈴木: まず1つは、映画『エゴイスト』が、まだ課題はありつつも性的マイノリティの表象にこだわった作品であり、今までそうした作品が日本では多くはなかった、という背景があると思います。それに加えて、テーマとして“その先”を描いているということも重要なポイントになっています。

鈴木亮平, 宮沢氷魚 インタビュー|写真16

“その先”と言うと?

鈴木: “愛とエゴ”という誰もが胸に突き刺さるような物語であることです。 “愛とエゴ”の境目というのは、人によって様々な解釈ができるものだと思います。だからこそ、浩輔や龍太、そして母親の物語であると同時に、皆が話したくなるような作品になっているのだと思っています。

宮沢:『エゴイスト』では色々な形の愛を表現しているからこそ、様々な人が何らかの形で共感できる部分がある。もちろん浩輔さん、龍太、そして母の物語でもありますが、彼らを通して、映画を観ている人自身の“自分たちの物語“や生活、思うことを見つけることができる「共感できる作品」に仕上がっていると思います。まるで自分たちも浩輔さんや龍太たちと同じ空間にいるような疑似体験と言いますか、“自分ごと”のように感じていただけたら嬉しいです。

自分自身と「演じること」について

鈴木亮平, 宮沢氷魚 インタビュー|写真5

映画『エゴイスト』では、“愛とはエゴなのか”という問いを描く中で、自分の気持ちと“相手がどう感じているのか”の狭間にある葛藤が描かれています。俳優も、“自分の表現”と“求められる像”の間に常におかれているのではないかと感じますが、お2人は普段どのようにしてバランスを取っているのでしょうか。

鈴木:演じる役によって自分のイメージや求められる像が変化していくのは、俳優の宿命と言いますか……。それは当然だし、むしろ面白いな、と感じています。例えば、良い人の役をたくさん演じた後に、その“良い人”イメージを裏切るような悪人の役を急にやった時、皆さんの期待を良い意味で裏切ることになったり。特にそこを意識して出演作品を決めているわけではありませんが、イメージって面白いな、と感じます。

自然にバランスを取ることができる、ということでしょうか。

鈴木:バランスが崩れることも楽しめるというか(笑)。「本当の自分を理解してよ」と思うなら、おそらく僕は俳優にはなっていないですね。本当の自分を見られたくない、という思いの方が強いかもしれないです。ただ、面白いもので、演技って結局は“自分”からしか出てこないんですよ。なので、本当の自分を見られているわけではないけれど、自分の一番恥ずかしい部分や見せたくない部分は、どうしたって見せることになるんですよね。だから『エゴイスト』でも僕の歌が下手なところを見られたり……(笑)。

歌い出すシーンは印象的でした。

鈴木:歌い出す場面は浩輔のキャラクターとして非常に意味があるシーンなのですが、人間・鈴木としては「見ないでー!」と思ってしまうんですよね(笑)。でも同時に、俳優・鈴木としては自分の一番見られたくない部分をさらけ出すことこそが、お客様の感動を生むと思ってもいます。客観的に見ている自分と、主観的に恥ずかしがっている自分の両方がいる、というのは俳優って面白いなと感じますね。

鈴木亮平, 宮沢氷魚 インタビュー|写真8

宮沢さんは、自分の表現と“求められる姿”のバランスについてはどのように考えていますか。

宮沢:役者をやっていてこんなことを言うのもどうかと思うのですが、僕は、自己表現が上手くない方だと思っています。すごく不器用なので、自分が求められているものに対してすぐに答えが見つからなかった。自分の中では「こういう風に表現したい」と思っても、なかなかそれが表現として成立していなかったり。

でも、不器用な分、時間はかかっても、自分の中身を深く掘っていって、自分の中で伝えたいことをうまく引っ張り出せばとても良いものが残せると『エゴイスト』の撮影を通して気付くことができました。

『エゴイスト』の現場や環境が、宮沢さんご自身の変化へと繋がったということですか。

宮沢:そうだと思います。『エゴイスト』の現場は、芝居と言うよりも“本当にその人物になってその時間をただ生きている“現場でした。

松永監督は少しでも自分の発している言葉や動きに嘘、ごまかしがあったらすぐに見抜ける方でした。ですから嘘のない演技をとことん追求できました。うまくやろうとか、こういう風に見えてればいいな、ということを一切考える余裕がない程に、自分との勝負をさせていただける贅沢な環境。過酷ではありましたが、恵まれた環境で芝居をすることができたな、と感じています。

『エゴイスト』に出演していなかったら、いまだに表面だけの芝居になっていたかもしれません。でも、内側から何かを感じて本当に伝えていかないと、観ている人たちには嘘だとバレてしまう。これからも、『エゴイスト』の龍太のような役の向き合い方ができればいいな、と思います。

物語を生きる役作りと気付き

鈴木亮平, 宮沢氷魚 インタビュー|写真11

あらためて、お2人が演じた役柄について教えてください。

鈴木:僕が演じた浩輔は、ファッション誌の編集者として働くゲイの男性です。田舎町で育った浩輔は早くに母を亡くし、自身のセクシュアリティを隠して思春期を過ごした過去を持っています。田舎を出た後はハイブランドの洋服をまとって編集者として働き、親しい友人たちと気ままな時間を過ごしながら日々を送っています。龍太と出会い恋人同士となったことで、次第に龍太や彼の母親のことを支えたい、と考えるようになります。

宮沢:僕が演じた龍太は、トレーニングをサポートするパーソナルトレーナーとして浩輔さんと出会い、浩輔さんと恋人同士に。一緒に住んでいる母親を養いながら健気に暮らしていましたが、浩輔さんから差し伸べられた「サポートしたい」という救いの手を、最初は戸惑いながらも受け止めていくキャラクターです。

鈴木亮平, 宮沢氷魚 インタビュー|写真6

まず、鈴木さんが役作りをしていく上で重視したことは何ですか。

鈴木:『エゴイスト』は原作者である高山真さんの自伝的な物語なので、浩輔のキャラクターの基盤となる、高山さんご自身が“実際はどのような方だったのか”ということを知人の方々にうかがうところから始めました。「本当に浩輔として生きる」ためにはどうすればよいかを自分なりに探っていった感じです。

また、『エゴイスト』は浩輔と龍太というゲイカップルが主人公の物語ですので、当事者の方が映画を観てくださった時に、きちんと“自分たちの物語”だと思っていただけるかどうかを、大事にしていきたいと考えていました。そのために、LGBTQ+監修 の方にも入っていただき、話し合いながら役作りをしていきました。

役作りのリサーチを重ねる中で、印象的だったことはありますか。

鈴木:浩輔はファッション誌の編集者という役柄ですが、実際にファッション誌の編集者として働いている方にもお話を聞きました。ゲイの当事者でもあるのですが、「職場ではカミングアウトをしていない。公言するとまだまだ出世に響く業界だ」とおっしゃっていたのが印象に残っています。僕のイメージでは、出版業界やファッションに関わる分野はセクシュアリティへの理解やセクシュアルマイノリティの待遇に関して一歩進んでいるのかなと思っていました。

表から見えているイメージとは裏腹に、やはり生きづらい環境と言うのはたくさんあるのだと感じた出来事でした。それは芸能界にしても、そういう部分があると思います。

鈴木亮平, 宮沢氷魚 インタビュー|写真7

宮沢さんはいかがですか。

宮沢:原作をメインにしながらも、「プラスで自分にできることは?」と考えた時に、大事にしたかったのが“ゲイコミュニティをちゃんと理解する”こと。僕には15年以上仲のいいゲイの友人がいて、多くを学びました。クランクインするまでの期間、食事に行ったり、他愛もない話をしたりするだけでも、たくさん知識を得ることができます。とてもありがたかったですね。

また、龍太はパーソナルトレーナーなので、自分が鍛えるのはもちろん、トレーニングを教える側としての準備もしました。これがとても難しいもので、教える相手のモチベーションを上げたり、その人に合ったメニューを考えたり……。プロならではのテクニカルな部分をしっかり準備する必要がありました。ただ学ぶだけではなく、実際に人にトレーニングを教える稽古の時間も設けて頂いた。テクニカルな部分もしっかり準備できたことが、リアリティに繋がっていったのではないかな、と思っています。

龍太と浩輔がトレーニングするシーンもありますね。

鈴木:龍太と一緒にトレーニングするシーンは、本当にきつくて……(笑)。実際に追い込んでくれるので、劇中で「見てみて、ねえちょっと手震えてるんだけど」と浩輔が言っているシーンがあるのですが、あれは演技では絶対にできない震え方ですね(笑)。あの痙攣を映画に残せたのは中々すごいぞ、とおそらく誰も引っかからないところに喜んでいました。

鈴木亮平, 宮沢氷魚 インタビュー|写真13

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