"Not Yet. Come Back Tomorrow~!(まだだよ。また明日来てねー!)"インタビュー開始直前、オープン前日にも関わらず、すでに客が店に入ろうとした時にデザイナー、スコット・スタンバーグ(Scott Sternberg)が放った一言だ。デザイナーの人柄、ブランドの注目度や人気ぶりを証明する一コマだった。
2013年10月、世界初となる旗艦店を、東京・千駄ヶ谷にオープンさせたバンド オブ アウトサイダーズ(BAND OF OUTSIDERS)。今では日本でもホットなブランドの一つとして知られているが、例えばデザイナーのスコットがもともとはハリウッドの映画業界出身だとご存じだろうか。コアな映画ファンならば、ブランド名から察しがついたかもしれない。バンドが始めはシャツとタイだけに焦点を絞ったブランドだったということはどうだろう。
今回は、そのユニークな経歴や、気になるデザイナー自身のパーソナリティ、そして注目の旗艦店について質問をぶつけるため、スコットにインタビューを決行。オープン前のショップにお邪魔してたっぷりと語ってもらった。
私が働いていたのは、CAA(Creative Artists Agency,L.L.C.)というとても大きなエージェンシー。例えば、スティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)やスパイク・ジョーンズ(Spike Jonze)といった誰しもが知っているような映画監督や俳優をクライアントに抱えています。
自分が所属していたのは、インターネットが普及して間もないころ。デジタルテクノロジーやニューメディアをどのように使うかをクライアントに教える部門でした。だから直接タレントたちと関わったり、映画を作っていた訳ではありません。でも、もちろん映画は大好きですよ。
その当時は、ちょうどインターネットが一般的になり始めた頃で、自分も何か新しいことに取り組みたいと思ったのです。そう考えたときに、自分のブランドを持つというアイディアが気に入りました。
でもそれまでは、服を作れるなんて思いもしませんでした。むしろそんなの退屈だと思ってましたね。でもたくさんの人に会って、服作りについていろいろなことを聞いて回っているうちに、ファッション業界の多様性や、志を持つ者に開かれる門戸の広さに気付いたのです。それに、セレクトショップもバイヤーもエディターも皆この業界の人々は新しいものを見たがっています。これらのことが、私の頭の中で重なり合って、そして考えてるうちに、自分のブランドの方向性を見出したのです。メンズウェアで、名前は「バンド オブ アウトサイダーズ」で…てね。
*バンド オブ アウトサイダーズのブランド名はジャン= リュック・ゴダールの映画「はなればなれに」の英題から由来している。
ええ、私はLAを拠点にしているのですが、そこで手に入るのがヴィンテージの生地ばかりだったので、始めの2年くらいはシャツやタイに絞って服作りをしていました。
そうです。シャツやタイを作っていて、その後、ごく自然な流れで、次第にスーツが作りたくなったのがきっかけです。
マーティン達職人は、伝統の世界に生きていて、一方、私は美しくクラシックなシャツをどのように次のステップに持っていくかを課題とし、新鮮なアイディアを探し求めています。だからマーティンと仕事をするのはとても興味深いと感じました。
そしてその結果、良質でありつつ新しさもあるアイテムが生まれたのです。また、バンドでは過去を振り返ったり、温かみを大切にしたいとも思っていたので、オーセンティックで品質の良い物を作る手助けをしてくれる人々には、その道のエキスパートを選んでいました。そうした点でも彼は大変心強かったです。
ええ。日本進出やウィメンズの立ち上げをステラ石井には手伝ってもらいました。こうして日本で旗艦店を持てたのも彼女のおかげかもしれませんね。私がステラの所にシャツ13枚、タイ20個ばかりの小さなコレクションを持って行った時、チームで一晩よく考えたいので作品を預からせてほしいと言われました。彼女が素晴らしいのは、真摯に向き合い、一緒になって戦略を考え、ちゃんとハートで仕事をするところです。敬愛してやみません。
右) バンド オブ アウトサイダーズ2014年春夏メンズコレクションより
左) バンド オブ アウトサイダーズ2014年春夏ウィメンズコレクションより