まとふ(matohu)の2020年秋冬コレクションが発表された。
2019年春夏よりプロジェクト「手のひらの旅」を継続するまとふは、2020年春夏に引き続き“藍染”に着目。徳島・上勝町に細々と続く藍染の現場を訪れたデザイナーの堀畑裕之と関口真希子は、自然のリズムに寄り添い、何百年と受け継がれる知恵と技術にふれる。今季のテーマは「循環する命」──藍染の更なる可能性を探ることで、身近な資源を継承しつつ活かす“サスティナブル”の本来の意味を問いかけた。
藍染というと、綿や麻といった素材のために春夏のイメージが先行する。今季のまとふはそうした藍染を、ウールやカシミヤ、シルクなど藍染の難しい秋冬の素材へと用いた。すっきりとしたフォルムのスーツには、ウールの糸を藍染して織りあげたツイードを使用。シルクのストールやカニミアのロングニットにも藍染を施し、素材の違いが生みだす藍色の多彩さを表現している。
また、程よいAラインのワンピースやブランドの定番である長着、ジャケットには、ウールフラノに縫い絞りを施すことで、藍染に大胆なアクセントを。襟の裏側など随所を異素材で切り替え、素材による藍染の色の差を取り入れている。さらにピアスは、メープルの白木をグラデーションに染め上げ、軽やかな印象に仕上げた。
一方、生成りのジャケットには、上勝町ならではの素材「キノフ(KINOF)」を採用。かつてこの町では林業が盛んであったものの今や衰退し、多くの杉が放置されることとなった。そうした杉の間伐材から和紙の糸をよりあわせ、それを織りあげることで作られた「キノフ」は、柔らかく自然な風合いが魅力的だ。そしてここにも、身近な資源へとまなざしを注ぎ、それを活用する姿勢が綺麗にうつしだされている。
ほかにも、岩手や山形など日本各地で織られたテキスタイルをふんだんに使用。モダンでクラフィカルな模様を、透け感のあるオパールプリントやジャカードで表現している。ワンピースのフォルムも、素材の質感と模様を活かすよう、シンプルに仕上げた。
コレクション全体を覆うのは、秋冬の柔らかく温かみのある色合いだ。深みのある濃淡さまざまの藍色はもちろん、ベージュやマスタードイエローなど、そこに鮮やかなオレンジやターコイズブルーでアクセントを添えている。