ヒュンメル(hummel)のファッションライン、ヒュンメルオー(HUMMEL 00)の2026年春夏コレクションが、東京コレクション期間中の2025年9月2日(火)、東京タワーメディアセンターにてプレゼンテーション形式で発表された。
1923年に創業したヒュンメルの哲学を継承し、スポーツウェアにモダニティを付与するヒュンメルオー。3シーズン目となる今季、クリエイティブディレクターの森川マサノリがテーマに掲げたのは「Human Anatomy(人体解剖学)」だ。
サッカー専用スパイクを原点とするブランドのレガシーに向き合う中で、あらためて人体構造への興味が湧いたという森川。コレクションでは、機能服としてのスポーツウェアの形状を逸脱しない範疇で、人体解剖的なパターンを衣服へと落とし込んだ。
たとえば、テクニカル素材のシャツやパンツには、筋繊維あるいは関節を模ったパイピングをオン。ハーフジップのスウェットシャツ&パンツのセットアップでは、“人のかたち”を立体裁断により表現した。このほか、骨格筋の構造を再構築したようなパネル構造のシャツやカットソーも目を惹く。
人体構造のほかにも、幽体、スポーツにおけるゾーンなど、“不可視なもの”に着目したという森川。見えないものを見せる/見えるものを隠すというアイデアは、控えめなロゴ使いに垣間見ることができる。アイコニックな“バンブルビー”ロゴを押し出した先シーズンから一転、今季はロゴを生地と同系色の刺繍であしらい、最小限の表現に留めた。
ブラックやグレーのカラーパレットを中心に、スポーツウェアの定番であるナイロンタフタやジャージー素材をチョイス。全体をスポーティーにまとめつつ、スタイリングの絶妙な駆け引きによりモダンな印象に引き寄せている。アクティブなハーフパンツには、フルレングスのパンツを仕込むことで洗練されたムードに。足元はロングブーツやレースアップシューズ、ポインテッドトゥのパンプスなどでドレスアップした。
コレクションでは、ブランドのルーツである北欧、とりわけヒュンメルが長年にわたり大切にしてきた「ヒュッゲ」の概念を取り入れている点にも注目したい。ヒュッゲとは、デンマーク語で「他者との楽しい時間・親密で居心地の良い空間」を意味する言葉。今季は、1968年に創業したデンマークのテキスタイルメーカー・クヴァドラ(Kvadrat)とのコラボレーションにより、心地よく親密なムードを衣服に落とし込んだ。
厚手のメッシュ生地を用いたスウィングトップスやハーフパンツ、ドット刺繍がシアーに透けるシャツは、軽やかな表情を保ちながらもどこか温かみのある印象。レッドカラーのリブニットは、ソファやラグを思わせる重厚さを湛えている。コラボレーションによるこうした素材使いが、スポーティーモダンなコレクションに穏健な雰囲気を添えている。