リック・オウエンス(Rick Owens)の、2025-26年秋冬ウィメンズコレクションを紹介。
今季のコレクションは、2025年1月に発表された2025-26年秋冬メンズコレクションと同様に「コンコルディアンズ(CONCORDIANS)」と名付けられている。イタリアの工業都市コンコルディアは、リック・オウエンスの工場が位置する場所だ。この地でリック・オウエンスは22年間にわたり、デザインチームとともに閉ざされた生活を送りながらクリエーションを追求してきた。今季のコレクションには、コンコルディアでクリエーションに集中してきた中で出会ったインスピレーションやアイディアが随所に取り入れられている。
たとえば、リモワ(RIMOWA)とコラボレーションしたキャリーケース「オリジナル キャビン」をきっかけに、ダイナミックなレザーのフライトジャケットや脚をカバーするレザーチャップスを製作。内装をブラックレザーで統一したキャリーケースと同じように、ジャケットやレザーチャップスの裏地までレザー仕立てにすることで重厚感とフェティッシュさを加えている。
ボディラインを誇張するシルエットは、デザイナーやアーティストとタッグを組むことで創造性を深め、より一層存在感のある佇まいに仕上げた。たとえば、パリのデザイナー、ヴィクター・クラヴェリーとタッグを組んだチェーンリンクのスカートやドレスは、手編みによるソフトな質感とレーザーカットされたレザーの動きが相まって有機的な表情を見せる。
また、ラバーアーティスト、マティス・ディマジオとともに生み出したフーディーやトップスには、幾重にも重ねられたナチュラルラバーのフリルを配置。細かく層を織りなしつつ、時折波打つようにうねる様子も見え、衣服の表面に緩急や躍動をもたらしている。
多くの変遷を辿ると同時に、その軌跡の中で唯一無二のアイデンティティを積み上げてきたリック・オウエンス。ブランドを象徴する彫刻的なフォルムは、ボリュームだけでなく鋭利さを伴っている。ドラキュラを彷彿させるそびえ立つような襟のレザージャケットやコート、一直線に切り開くようなスリットを配したスカートなど、ディテールに急な角度をつけることでエッジを効かせている。パワーショルダーのジャケットは、肩を誇張するだけでなく直線的な輪郭線を描くことでストイックさを漂わせた。
素材の加工も目を引く要素が多く見て取れる。ところどころにスクラッチの痕跡が残る艶やかなブラックのドレスには、コーティングデニムを採用。ブロンズ箔とワックスをプレスしてから洗いをかけるこでほころびを生み出し、退廃的な風合いに仕上げている。また、日本製のオーガニックインディゴスラブデニムを用いたドレスやスカートにはストーンウォッシュ加工を施して褪せたような質感に。
荒涼とした工業地帯を思わせる粗野なテクスチャーが散見される一方、毛並みの揃った起毛ブルゾンや、真っ白にブリーチを施したアリゲータースキンのショートジャケットなど、端正な質感のピースも登場。たっぷりとした分量感のドレスには全面にスパンコール刺繍を施し、神秘的なエッセンスを加えている。