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【インタビュー】宮前義之率いるイッセイ ミヤケ、「一枚の布」の概念のもと進化するものづくり

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日本を代表するブランドとして、日本のみならず世界のファッション史において大きな功績を残してきたイッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)。現在、そのウィメンズデザイナーを務めているのは宮前義之だ。

宮前の創作には、常にイッセイ ミヤケが大切にしている「一枚の布」という概念がある。今回は、インタビューを通して、その「一枚の布」を軸に活動してきた宮前のこれまでを振り返りながら、イッセイ ミヤケ独自のものづくりを紐解いていく。

Introduction. イッセイ ミヤケの哲学、「一枚の布」の概念を広めるため

イッセイ ミヤケの服づくりの中で「一枚の布」という言葉はキーワードになっています。この言葉の意味を教えてください。

「一枚の布」は、イッセイ ミヤケの服づくりの基盤となる哲学そのもの。東洋・西洋の枠をはずし、身体とそれをおおう布、その間に生まれるゆとりや間の関係を根源から追求する思想でもあります。そして1本の糸から研究し、オリジナルの素材をつくるところから私たちイッセイ ミヤケの服づくりははじまります。

そして受け継がれてきたイッセイ ミヤケのものづくりの思想を次に繋げていくことが私の使命としてあります。しかし「一枚の布」の概念をひと言で語るのは簡単ではありません。ものづくりの現場でチームと共に手を動かしながら考えていくことを大切にしています。

宮前さんは「一枚の布」の概念を、どのようにして理解されたのでしょうか。

入社してすぐは三宅に近いところで仕事をしてきたので、その哲学を肌で感じて学んでいました。イッセイ ミヤケでは、「一枚の布」という概念を指針に置きながらも、比較的自由にものづくりができ、新しいことにチャレンジできる環境が整っています。

私はひたすら手を動かして色んなことに挑戦させてもらい、徹底的にやらせてもらえたからこそ、「一枚の布」の考えを深めていきました。しかし「一枚の布」という概念には決まった定義がある訳ではなく、これからもデザイナーとしてずっと向き合っていかなくてはならない永遠のテーマのように感じています。

story.1:三宅一生のそばで知った「一枚の布」の概念

三宅さんとはどのような仕事をされていたのですか。

三宅から声をかけてもらい、入社当初からA-POC(三宅一生と藤原大が率いるプロジェクト)の企画に携わっていました。

「A-POC」とは、どのような技術でしょうか。

「A-POC」とは、“A Piece Of Cloth(ア・ピース・オブ・クロース)”つまりは直訳で「一枚の布」のこと。1本の糸から一体成型で服をつくりだす製法を言います。これは、イッセイ ミヤケの「一枚の布」の概念を説明するにあたって欠かせないものでもあります。

通常の服はパターンをパズルのように縫い合わせて作りますが、従来の服と大きく異なり、無縫製なので縫い目もない。機械から編み出された一枚の生地にはさみを入れて服を切り出します。ちょうど21世紀になるときに登場し、画期的だと世界から注目を浴びました。

編みの技術のみならず、織りの技術も積極的に研究開発していきました。例えば、襟は赤くしたい、袖は青くしたいと思いついたとして、素材を組み合わせるのではなく、1枚の生地の中にパターンを設計して、そこに襟は赤、袖は青といった情報をダイレクトにプログラムしていきます。

「A-POC」が提案する服の新しい在り方も「一枚の布」の概念に通じています。

それはどのような点ですか。

「A-POC」は、着る人が服づくりに参加することができ、着る側にも自由度がある。例えば、その服を買った人がハイネックを丸首にできたり、長袖を半袖にできたり。途中まではデザイナーが作るが、最終的な服の形は着る人に託すというか。

そして、誕生当初から象徴的なシリーズが「コットンバゲット」。バゲット=フランスパンから由来しているのですが、「フランス人が毎日食べるフランスパンのような存在であってほしい。毎日着られるような服であってほしい。」という想いが込められた服でもあります。

「A-POC」の服作りの面白さはどういったところにありますか。

イッセイ ミヤケの服づくりは素材から作ることを求められています。頭の中でこういう服を作りたいと思った時に、どんな素材だったらできるだろうとイメージを膨らませるられること。自分が創りたいかたちを素材から設計できる楽しさとでもいうのでしょうか。

素材には、もともと興味があったのでしょうか。

私は高校生の時から独学で服を作り始めて、専門学校に入ってから本格的に学びましたが、素材にさほど興味を持っていませんでした。だから入社3年後ぐらいまで挫折の日々でした。

どのような点で躓かれていたのでしょうか。

当時、三宅、藤原、そして私ともうひとり新人スタッフで定期的にミーティングをする機会が多かったのですが、素材の知識がなく、会話についていけませんでした。「違う惑星の言葉を話しているのではないか!?」と思うぐらい、理解できなかったです(笑)。

どのように克服していきましたか。

ひたすら工場に足を運び、機械のことから、糸のこと、染色のことまで、工場の方たちとやり取りをしながら全て現場で勉強しました。本を読んで簡単に覚えられるようなことでもないので、とにかく見て、触って、そして時には失敗もして……。

そして、3年後ぐらいにやっと知識が増えてきました。理解できるようになってからは、「A-POC」の服作りがとても面白くなっていきました。

私にとって「A-POC」は、デザイナーとしての原点となりました。

story.2:プリーツの存在の大きさとイッセイ ミヤケのデザイナーとして歩む道の模索

イッセイ ミヤケといえばプリーツが代表的な素材です。

プリーツは“奇跡みたいな素材”だと思います。伸縮性があって、持ち運びが便利で、身体が解放されるような感覚で着られる。あれほど誰もが、気負わずに着られる素材は他にない。

プリーツ素材のワンピースは、仕事帰りにヨガにも行けるし、ちょっとしたアクセサリーをつければオシャレなディナーにも行ける。出張となれば、くるっとまるめてコンパクトに持ち運べて、クリーニングに出さなくても、自分で洗濯すれば翌朝には乾いています。

プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ 2019年春夏コレクションより
プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ 2019年春夏コレクションより

「A-POC」にも通じるものがあって、着る側に自由度があります。それがほかのブランドにはない、イッセイ ミヤケならではのことだと思っています。

デザイナーに就任して最初のコレクションは、プリーツを封印しました。

毎シーズン何か新しいものを世の中に出すというのは、イッセイ ミヤケのデザイナーの使命でもありますから。何か新しいことをしよう。そして何かを変えようと。

ファッションは常に新しいことを求められているし、今までやってきたことを封印して、新鮮なコレクションをと思いプリーツを使いませんでした。

宮前のデビューシーズン、イッセイミヤケ 2012年春夏コレクションより
宮前のデビューシーズン、イッセイミヤケ 2012年春夏コレクションより

でも、そのあと2シーズン目にはプリーツを戻していますよね。それはなぜですか?

プリーツをなくしたのは間違った判断だったと思ったので、次のシーズンには戻しました。

どういった考えからですか?

プリーツという素材をイッセイ ミヤケはきちんと守っていかなければならないし、30年に渡って積み上げてきたノウハウを崩してはならない。すべてを変えるのではなく、“続けていくこと”をきちんとやるべきだと感じました。

一方で、ファーストコレクションで、自分のやるべきことがとても明確になりました。三宅たちと6~7年間にわたって「A-POC」に取り組んできた私の強みは、素材から服を作れることですし、それを活かすべきだと思いました。そうでなければ、私がデザイナーになった意味がない。

宮前さんがイッセイ ミヤケのデザイナーとしてすべきだと思ったことは何ですか?

イッセイ ミヤケの代名詞であるプリーツと「A-POC」を発展させることが私のやるべきこと。だから2シーズン目に軌道修正して、素材ともう一度向き合うことにしました。

2シーズン目、イッセイ ミヤケ 2012-13年秋冬コレクションより
2シーズン目、イッセイ ミヤケ 2012-13年秋冬コレクションより

story.3:デザイナー就任後の原点回帰、チームで協力する素材との対話

素材と向き合うにあたって、どのようなことからスタートされたのでしょうか。

「A-POC」を通じて学んだことは、準備が服づくりにおける完成度の80%を占めるということ。

展開を予定する色や、生地の準備など、全てを徹底的にリサーチします。それさえできればチームにアイデアを共有したとき、メンバーが理解しやすく、一定以上のクオリティーのあるものができる。

2シーズン目の開発もそうでした。まずは、自分が持っているノウハウの中で、「この素材に熱をかければこう変化するのではないか」「樹脂を合わせればプリーツが変化するのではないか」というように自分なりの仮設を立てていきました。

そこからは現場に足を運んで、工場で仮説の検証です。

工場の方たちとのやり取りも重要になってくるのですね。

イッセイ ミヤケの技術は特殊なので、工場の方たちとのやり取りはとても大事です。長いスパンでビジョンを共有して、同じ会社のメンバーのように親密な関係を築いていかなければならない。いかにして足並みを揃えていくかが問われます。

工場の方とはどういったやり取りをされるのですか?

入社したばかりの時のように、何度も現場に足を運び、地道にすり合わせます。

ぱっと思い付いたようなことは、過去20年間、イッセイ ミヤケのものづくりに携わって来た私の先輩たちも当然思いついて、実際に形にしたことのあるものばかり。「前に発表したことがある」と言われてしまったり、ようやく新しいものを提案できたとしても、「それは製品として形にすることはできない」と回答されてしまったり。仮説のなかで、「これはできるか?」「できないか?」と実現可能ラインを徐々に明確にしていき、工場の方たちと新素材のビジョンを固めていきます。

できないと言われることもあるのですね。

最初はだいたいできないと言われますね。ビジョンを共有して、一緒に足並みをそろえて地道にやっていくしかないです。

小さな一歩でも「できた!」ということを工場の方々にも感じてもらい、お客さまに好評で販売につながると「売れました!」と報告して、次も一緒にやろうと思ってもらえるように結果と達成感を共に分かち合います。それでまた次の課題をクリアしていくという繰り返しです。

パリやロンドンを拠点にするほとんどの高級ブランドは、イタリアの職人が生地をブランドに提案し、デザイナーがその中からセレクトして服を作っていくということが多い。イッセイ ミヤケが違うのは、工場と1本の糸を作るところから共に始めるところです。

地道な進歩のなかで、新しいプリーツ素材「スチームストレッチ」を発表しました。

先の話に戻りますが、イッセイ ミヤケの代名詞であるプリーツと基本となる概念「A-POC」を発展させることが私のやるべきこと、とお話しました。「一枚の布」という概念に、プリーツの考え方を加える。

プリーツはひとつの襞(ひだ)が集まったものと捉えて、「A-POC」にその襞をかけあわせたらどうなるか。

最初に「スチームストレッチ」をパリ・コレクションで発表した時には、スタッフがアイロンで生地にスチームをあてるデモンストレーションをして“蒸気で縮む生地”ということを大きく打ち出しましたが、実は、水面下では更なる発展系を完成させるべくもがいていて、発表時は、理想の第一段階でした。「スチームストレッチ」が私が思い描いた理想のプリーツになったのは、最初の発表から2年経ってからのことでした。

2シーズン目、イッセイ ミヤケ 2012-13年秋冬コレクションより
ショー演出で、スチームアイロンを用いて「スチームストレッチ」を発表
2シーズン目、イッセイ ミヤケ 2012-13年秋冬コレクションより
ショー演出で、スチームアイロンを用いて「スチームストレッチ」を発表

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