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展覧会「風景論以後」東京都写真美術館で - 写真・映像の“風景”その背後にある社会的構造を問う

展覧会「風景論以後」が、東京都写真美術館にて、2023年8月11日(金・祝)から11月5日(日)まで開催される。

1970年代前後の日本における風景論とその後

足立正生、岩淵進、野々村政行、山崎裕、佐々木守、松田政男 『略称・連続射殺魔』
1969年 デジタル(オリジナル35mm) 86分 東京都写真美術館蔵
足立正生、岩淵進、野々村政行、山崎裕、佐々木守、松田政男 『略称・連続射殺魔』
1969年 デジタル(オリジナル35mm) 86分 東京都写真美術館蔵

風景は、芸術や美と結びつけて語られ、西洋の近代美術の主題となってきた。また、写真や映像においても、カメラのレンズを通して撮影者の視点をうつしだすという意味で、風景は重要な主題であり続けてきた。そして、「風景とは何か」を問う風景論は、社会的な構造や美の捉え方をも語るものであり、不安定な社会状況を背景に登場してきたのだった。

中平卓馬 《無題》
1968-69年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵
中平卓馬 《無題》
1968-69年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

実際、1970年前後の日本に現れた風景論は、どこにでもある風景を現実の側から捉えなおそうと試みるものであった。70年代に入り、学生運動の潮流が下火になる一方、全国的に都市化と均質化が進むなか、ありふれた、日常的な風景を国家と資本による権力そのものだとする風景論が、写真や映像メディアと連動して展開されたのだった。このように、写真や映像にうつしだされる風景の背後には、表面的には目に見えない権力の網の目が存在していると捉えられるのだ。

遠藤麻衣子 《空》
2022年 オンライン映画より 東京都写真美術館蔵
遠藤麻衣子 《空》
2022年 オンライン映画より 東京都写真美術館蔵

展覧会「風景論以後」は、このように1970年前後の日本に登場した風景論を起点として、風景のなかに反映された社会制度や事象にまで光をあてるもの。当時の議論を牽引した映画批評家・松田政男による風景論や、その理論と連動した写真・映像表現を紹介するとともに、現在に至るまでの作品をたどることで、風景論以後の写真と映像の可能性を探ってゆく。

現代における風景

笹岡啓子 「PARK CITY」より
2022年 インクジェット・プリント 作家蔵
笹岡啓子 「PARK CITY」より
2022年 インクジェット・プリント 作家蔵

第1章では、現代における風景に着目。現代では、スマートフォンなどによって誰もが美しい風景を写真や映像に残すことできる一方、ソーシャル・メディアを通して、人びとはあらゆる種類の写真や映像を大量に消費している。このようにイメージが氾濫するなか、風景の背後に存在するものに目を向けることは難しい。会場では、広島平和記念公園とその周辺を継続して撮影し、公園都市としての広島を捉えてきた笹岡啓子などを紹介する。

個人に向かう表現

清野賀子 「Emotional Imprintings」より
1996年 発色現像方式印画 東京都写真美術館蔵
清野賀子 「Emotional Imprintings」より
1996年 発色現像方式印画 東京都写真美術館蔵

1970年代後半を経て、バブル経済の膨張と崩壊が起こる80〜90年代にかけて、写真や映画においては、非商業的で、個人に向かう表現が多数手がけられている。第2章では、70年代頃から写真や映像を用いて、大阪の居住地周辺の日常的な風景を記録するようになった今井祝雄や、ファッション誌の編集者から写真家に転向し、人の気配を残した匿名的な風景を撮影した清野賀子などに光をあてる。

風景論誕生の契機

足立正生、岩淵進、野々村政行、山崎裕、佐々木守、松田政男 『略称・連続射殺魔』
1969年 デジタル(オリジナル35mm) 86分 東京都写真美術館蔵
足立正生、岩淵進、野々村政行、山崎裕、佐々木守、松田政男 『略称・連続射殺魔』
1969年 デジタル(オリジナル35mm) 86分 東京都写真美術館蔵

本展で着目する風景論が生まれる具体的な契機となったのが、足立正生、佐々木守、松田政男らによる映画『略称・連続射殺魔』だ。同作では、1968年に起こった無差別連続射殺事件の犯人が、生まれてから逮捕されるまでに目にしたであろう風景のみ構成されている。第3章では、この『略称・連続射殺魔』や、風景論を経て独自の実作と理論へと向かった中平卓馬を紹介する。

1970年代前後の風景論を再考

大島渚 『東京战争戦後秘話』より
1970年 アーカイヴ資料映像
©大島渚プロダクション 協力:国立映画アーカイブ
大島渚 『東京战争戦後秘話』より
1970年 アーカイヴ資料映像
©大島渚プロダクション 協力:国立映画アーカイブ

第4章では、風景論の起源に着目。風景とは、馴染みのある言葉であり、さまざまな文脈や歴史的背景のもとに語られてきたため、風景論として定義することが難しい。1970年前後の日本における風景論は、そのなかでも特異な位置を占めるものの、当事者間の理論的な差異などから、その内容には大きく光があてられてこなかった。会場では、『略称・連続射殺魔』ばかりでなく、大島渚の『東京战争戦後秘話』などの映像作品、アーカイブ写真や印刷物の数々から、風景論の登場当時の議論を再考する。

展覧会概要

展覧会「風景論以後」
会期:2023年8月11日(金・祝)〜11月5日(日)
会場:東京都写真美術館 B1F 展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00~18:00(木・金曜日は20:00まで)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
観覧料:一般 700円(560円)、学生 560円(440円)、中学生・高校生・65歳以上 350円(280円)
※( )は有料入場者20名以上の団体、同館の映画鑑賞券提示者、各種カード会員割引料金
※小学生以下、都内在住・在学の中学生、障害者手帳の所持者および介護者(2名まで)などは無料
※第3水曜日、9月18日(月・祝)は65歳以上無料
※8月11日(金)〜31日(木)の木・金曜日17:00〜21:00 は、サマーナイトミュージアム割引(学生および中学・高校生は無料、一般および65歳以上は団体料金)

■上映企画
・出品作家による上映:崟利子
日時:8月26日(土) 10:00 / 13:00 / 15:30 / 18:00
・出品作家による上映:遠藤麻衣子
日時:8月27日(日) 13:00 / 15:00 / 17:00
・風景論をめぐる映画特集:平沢剛(キュレーター、本展企画協力)
日時:8月24日(木) 18:00、10月6日(金) 18:00、10月7日(土) 10:00 / 13:00 / 15:00 / 18:00、10月8日(日) 13:00 / 15:00 / 18:00、10月9日(月・祝) 15:00 / 18:00、10月12日(木) 18:00、10月13日(金) 18:00
料金:いずれも 当日券(1プログラムにつき) 500円
※全席指定、各回定員(190名)入替制
※鑑賞当日10:00より当日上映回すべての受付を開始
※上映作品については美術館ホームページを参照

【問い合わせ先】
東京都写真美術館
TEL:03-3280-0099(代表)

Photos(10枚)

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