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【インタビュー】アメリのジャン=ピエール・ジュネ監督による映画『天才スピヴェット』

12歳の天才発明家、T. S. スピヴェットの冒険が始まる。『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督が3Dに初挑戦、新境地を切り開いた待望の最新作『天才スピヴェット』 (原題:The Young and Prodigious T.S. Spivet) 。日本公開が、2014年11月15日(土)に決定した。シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次ロードショー。 

【インタビュー】アメリのジャン=ピエール・ジュネ監督による映画『天才スピヴェット』 | 写真
Jan THIJS (c) EPITHETE FILMS - TAPIOCA FILMS - FILMARTO - GAUMONT – FRANCE 2 CINEMA

『天才スピヴェット』は天才少年が織りなす感動作。天才少年のイマジネーション、冒険、そして温かな家族の物語。7歳以下の武道選手権の世界チャンピオンであり、6ヶ国語を話す10歳の天才科学者スピヴェットが、アメリカ大陸を横断を独りで決行。才能を理解してくれない家族に黙って、権威ある科学賞の授章式に出掛けるという壮大なスケールの家出が描かれる。

愛らしいスピヴェット役には、映画デビュー作となるカイル・キャトレット。昆虫の研究に人生を捧げる風変りな母親役は、「英国王のスピーチ」やティム・バートン監督作品でおなじみのヘレナ・ボナム=カーターが演じる。

【インタビュー】アメリのジャン=ピエール・ジュネ監督による映画『天才スピヴェット』 | 写真

そして今回、『天才スピヴェット』を監督したジャン=ピエール・ジュネが来日。本人に本作の魅力や、初めて3Dで臨んだ撮影時の話、さらには監督としての映画作りへの姿勢などを聞くことができた。

『天才スピヴェット』を撮影しようと思った時のことについてお話ください。

実は、原作を10行読んだだけで気に入ってしまいました。オリジナルストーリーを書く気分ではなく、何か題材を探していました。オーストラリアで別の仕事をしている時に、この本が手元に届きました。時差ぼけで寝られなくて、夜が明けるまで読んでいて、「よしこれを撮ろう。」と思いました。

どんなところが気に入りましたか?

これまでと違うことが沢山あったこと。英語であること、広大な自然を撮影する機会もそうです。原作にはページの端に沢山のスケッチがあり、3Dを使ってスケッチが浮かんでいるように表現するというアイデアも浮かびました 。また、感動的なスピーチもその1つ。原作を読んだ時に、この感動的な場面を表現したいと思いました。

以前から3Dへの興味を示していました。『天才スピヴェット』で実現されましたね。

私の全ての作品、『アメリ』『エイリアン4』『デリカッテセン』だって3Dで撮影できたかもしれません。しかし、3D技術が映画に適応されるには、『アバター』の登場まで待たなくてはなりませんでした。

3D技術を使うのは、わくわくすることでした。実際に行ってみると、実に骨が折れて。2つのカメラを慎重にセットしないといけないので、通常では1分で済むことが、30分も時間を必要としたり。また、撮影後の編集時にも、細かいポイントを完璧にするのに1ヶ月かかりました。

【インタビュー】アメリのジャン=ピエール・ジュネ監督による映画『天才スピヴェット』 | 写真

良い映画には、良いストーリーが必要と言われています。あなたの視点からこの物語はどう感じましたか?

もちろん、良質なストーリーは欠かせません。それは40年代から言われていることですね。原作である「T・S・スピヴェット君傑作集」は沢山の要素が詰まった複雑な物語。例えば、科学と叙情の結びつき、家族、罪の意識、メディアに対する批判的な視線などです。だから、決して簡単なことではありませんでしたが、簡単じゃないことを作品にまとめていくのは楽しいことでした。

撮影中に大事にしていたことはなんですか?

それはもう、全て。私は働くのが好きです。映画を作るために生きているようなもの。働くと言うより、楽しくて仕方がない。ジャーナリストに向かって話す事以外はね。

キャスティング準備やビジュアルエフェクトを考えるのも好き。コスチューム、デザイン、音楽など色々なものがおもちゃ箱にあって、その全てを使って、美しいおもちゃを作っているようです。

撮影中は多くのスタッフに指示を与えなければいけません。チームとして動くために何が重要ですか?

監督がビジョンを持っていること。スタッフを幸せにするのは、監督のビジョンです。最悪な監督は、監督のふりをしている人です。75%のディレクターはひねくれ者だと言っている人もいます。監督は時には独裁者のように振る舞い、スタッフ皆が働きやすいように、方向性を示さないといけません。

私の全ての作品で光(ライティング)が重要なのも、アカデミー賞にたくさんノミーネートされているのも決して偶然ではありません。方向性をしっかり示しているから。前作のミックマックでは、画家のような気分で色を調整することを楽しみましたが、『天才スピヴェット』は、感動的な物語なので、より自然な色使いにしました。

【インタビュー】アメリのジャン=ピエール・ジュネ監督による映画『天才スピヴェット』 | 写真

確かにジュネ監督は独特の色彩表現に定評がありますね。意識してそのような強み、スタイルを伸ばしてきたのですか?

映画監督には2つのタイプがいると思っています。1つは、ティム・バートン、テリー・ギリアム、デビッド・リンチのように強烈なスタイルを持つ人。もう1つは、アン・リーやクリント・イーストウッドのように常に良い映画を作る人たち。

リーやイーストウッドは前者に比べると数分で特徴を認識するのは難しいでしょう。しかし、映画ごとにスタイルを合わせる事ができるので、より長いキャリアを積めるとも言えます。私は前者。ティム・バートンの映画がいつもティム・バートンであるように、私の映画は常に私。強いスタイルを持った監督でいる、それが私の好みです。

あなたの作品の根本にはいつも同じ様なテーマがあると思います。ご自身の言葉で表現していただけますか?

“孤児がモンスターと戦う(Orphan fighting against monsters)"が全ての作品にあるエッセンス。モンスターとは、時には、『エイリアン4』のエイリアン、『デリカテッセン』の精肉店のように実在するものであり、時には、罪悪感や、内向的な家族像のように、より抽象的になります。

孤児がモンスターと戦う、時には想像力を使って立ち向かうのは、もしかしたら私自身に重なるのかもしれません。私は17歳の時電話会社で働いていて、違う道に進むために、想像力を持って、立ち向かわなくてはいけませんでしたからね。

【インタビュー】アメリのジャン=ピエール・ジュネ監督による映画『天才スピヴェット』 | 写真

映画を作るのは莫大な予算が必要です。有名監督のあなたにとってもつきまとう問題でしょうか?

常につきまといます。今の人々は、SNS、ビデオゲーム、TVドラマなど多くの情報にさらされ、映画も週に15-20本くらいリリースされる。従って費やした予算が返ってくるかわからない環境なのです。

それに、私の撮影にはお金がかかる。だから、たくさんの予算が必要なプロジェクトとそうではないプロジェクトを持ちます。予算が大きいからといって、何の成功も約束されませんから。難しい問題です。

『天才スピヴェット』では問題になりませんでしたか?

予算は問題ありませんでしたが、残念ながら配給に関して問題があります。ある国への公開にあたって、配給会社が一部のシーンの修正を迫っており、私は拒否しています。

これを絵画に置き換えたらどうでしょう?ギャラリーオーナーが、画家に向かって、「この作品は好きじゃないから、ここを変えてくれ。」と言うのは、論外。芸術ではありません。私の映画に対して、私は全責任があります。誰かが好きではないからという理由で、編集されたり、カットされたりした映画を、私は出したくない。もちろん、日本で公開されるのは、オリジナル版ですから安心してください。

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シャネルなどファッションブランドとの仕事もされていますね。映画と比べてどうでしょうか?

自分が撮りたいものを撮れる映画と、顧客の要求に応えなくてはならないコマーシャルの仕事は全く異なる世界。コマーシャルの時は、顧客の意向を聞いていきます。同時に過大な要求に対しては私のビジョンを守らなくてはなりません。

ただ、シャネルで制作した短編映画は例外でしたね。私がストーリーを作り、シャネルのニューヨークのオフィスで提案しました。彼らは気に入ってくれて、求める予算にも応えてくれました。だからあのCMは私のストーリーで、結果的に、私のやりたいことをやらせてくれました。まさに奇跡といってもいいでしょう。

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振り返ってみて、ご自身が第一線の映画監督を続けられている理由はなんでしょうか?

正直言って分かりません。考えたこともないです。自分に正直にいないといけない。映画を作りたくて仕方ないのです。

料理に例えれば、シェフのように材料を調理して、自分自身のためにまず作ります。自分で気にいれば、周りにシェアしたくなります。時には、誰かが塩辛いとか、甘すぎるとか言うかもしれません。時には、本当においしいねと言ってくれます。でもそれは、最初に自分のために作らなければ分かりません。だから先ずは自分のために映画を作り続けています。

映画監督は私にとって天職。9才の時に劇の脚本を書いてみました。映画というものを見始める前の12才の時には、映画の原型となるものを作っていました。小さな時から自分の好きなことが分かっていたのは、幸運であり、天の恵みでした。

Interview and Text by Mikio Ikeda

■ストーリー
天才ゆえひとりぽっち、12歳のT.Sスピヴェットは一本の電話を受ける。それは、スミソニアン学術協会から最も優れた発明家に贈られる〈ベアード賞〉受賞の知らせだった!
自分の世界をやっと見つけたと思い、モンタナの我が家からワシントンDCへと向かうと決心。夜明け前に家を飛び出すとそこは彼の想像を超えた世界が待っていた。数々の危険を乗り越え出会いと別れ、大冒険を通じてT.S.の胸に宿るのは、大好きな家族だった―カウボーイのパパ、昆虫博士のママ、アイドルを夢見る姉、そして事故で亡くしてしまった弟。まだ少年のT.S.を目の当たりにし、ざわつく受賞式で彼のスピーチは人々の心を大きく揺さぶるのだった。

【映画情報】
天才スピヴェット (原題:The Young and Prodigious T.S. Spivet)
公開日:2014年11月15日(土)
※シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次ロードショー
監督: ジャン=ピエール・ジュネ『アメリ』『デリカデッセン』
原作:「T・S・スピヴェット君傑作集」ライフ・ラーセン著(早川書房刊)
出演:カイル・キャトレット
ヘレナ・ボナム=カーター『チャーリーとチョコレート工場』『英国王のスピーチ』
ジュディ・ディヴィス『バートン・フィンク』、カラム・キース・レニー『メメント』
ニーアム・ウィルソン『ソウ』、ドミニク・ピノン『アメリ』『デリカデッセン』
(C)2013 Epithète Films - Tapioca Films - Filmarto- Gaumont - France 2 Cinéma Jan THIJS (c) EPITHETE FILMS - TAPIOCA FILMS - FILMARTO - GAUMONT – FRANCE 2 CINEMA
2014年 シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー(3D/2D)

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