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【インタビュー】映画監督マイク・ミルズの新作は初のドキュメンタリー - 舞台は”うつ”が常識化した日本

【インタビュー】映画監督マイク・ミルズの新作は初のドキュメンタリー - 舞台は”うつ”が常識化した日本 | 写真

映画監督、マイク・ミルズ初のドキュメンタリー映画「マイク・ミルズのうつの話」が2013年2013年10月19日(土)に渋谷・アップリンク(UP LINK)で公開される。

ニューヨークを中心にグラフィックデザイナーやミュージックビデオの制作で活躍してきたマイク・ミルズ。グラフィック・アーティストとして、X-Girlマーク ジェイコブスなどにロゴやデザインを提供。また、ソニック・ユースやビースティー・ボーイズ、チボ・マットなどのアルバム・デザインやミュージック・ビデオを制作。90年代のニューヨーク、グラフィック・シーンの中心人物だ。

そんな彼が今回取り上げたテーマは「うつ病」。今や日本人の15人に1人がかかっているともいわれている。2000年初頭までは精神科周辺以外ではめったに聞かれなかったこの「うつ」という言葉がなぜ爆発的に広まったのか。

舞台は近年、急速にうつが常識化した日本。マイク・ミルズが撮影対象とした条件はふたつ。1つは「抗うつ剤を飲んでいること」2つ目は「日常生活をありのままに撮らせてくれること」。

本作でマイク・ミルズは、うつ患者たちの壮絶な日常を、独特の優しく明るい目線で捉えることで、現代を象徴する「うつ」という病気に対する処方箋を調合するとともに、今の日本社会の問題点を鮮やかに描き出す。マイク・ミルズが描く、“心の風邪”をこじらせた普通の人々の、壊れそうだけど愛おしい日々の暮らしに注目だ。

【インタビュー】映画監督マイク・ミルズの新作は初のドキュメンタリー - 舞台は”うつ”が常識化した日本 | 写真
© Sebastian Mayer

今回は監督、マイク・ミルズに映画について話を伺った。

日本を舞台とした映画ですが、ようやく日本公開が決まりましたね。

とても嬉しく、やっと念願が叶った思いです。日本で公開されない限り、この作品は僕の中で終わらなかったので。出演してくれた方々は、同じく鬱病で苦しむ他の人たちのために役立ちたい、という思いで協力してくれた、とても勇気ある人たちです。彼らはこの映画で日本の鬱をめぐる状況が少しでも変わればと願っていたので、彼らのためにも日本で公開に至って本当に嬉しいです。

出演者の方々がカメラに対してとてもオープンでした。どうやって信頼関係を築いたのですか?

彼らがあんなにオープンにしてくれたのにはいろんな理由があると思いますが、まず1つは日本のプロデューサーだった保田卓夫さんの人柄。最初に出演者たちとコンタクトを取ってくれたのも彼で、細やかな気遣いをする彼がいたから、みんな心を開く気になったのではないでしょうか。

それと、僕はカメラの前に立ってくれる人たちを愛しているので、彼らにその愛が伝わったのかもしれません。誰かが誰かに自分について正直に打ち明けるという行為は、人間同士の間で起こる最も美しいことの1つでしょう。だからカメラの前の人たちをリスペクトするんです。

うつを、心の病気、脳の病気どちらだと考えますか?

鬱はさまざまな要因が複雑に絡み合っていると思います。実際に脳内で鬱になる科学的要因が起こっているのと同時に、心に大きな影響を与えた出来事も現実的に経験していると思います。抗うつ剤の効能に疑問を呈する研究も多数ありますが、実際に効いている人も多くいるようです。もし服用している本人が効いていると言うなら効いているのでしょう。ただし、鬱から抜け出すための長期的・持続的な道は、セラピー、運動、友人や家族を持つこと、自分に正直でいられる世界に暮らすこと、自分にとって意味をなす世界に暮らすことが組み合わさった、もっと総合的なものではないでしょうか。

登場人物の持ち物の物撮りがありますが、どのような基準で選んだのでしょうか?

僕が描きたかったのは、ただの鬱の人たちではなく、いろんなことが起こる日常生活を生きている人たちのポートレイト。その人の持ち物を見ると、その人がわかると思っています。その人が自ら好んで得たものも、たまたま手元に置くはめになったものも、両方ともです。

撮影中、適当に選んで撮ったものは1つもないですが、一見あまり重要そうでないものが、その人がいる場所、その人が暮らす文化について多くを明かすということに僕は興味があります。人は自分が望むほど、自分の暮らしをコントロールできないものです。これはその人の持ち物や暮らしている場所を見るとわかる場合があります。

【インタビュー】映画監督マイク・ミルズの新作は初のドキュメンタリー - 舞台は”うつ”が常識化した日本 | 写真

監督の永遠のヒーローはイームズ夫妻だそうですね。

イームズがわれわれに教えてくれたのは、世界を慎重に観察することを、科学者のように見ることです。僕はこのドキュメンタリーの中で、出演者の持ち物を写しましたが、それは非常にイームズ的だと自分で思っています。その人の周囲にあるデザインはどれも、その人の人生の一部であり、その人を定義するものの一部です。イームズの映画はナレーターもいないし、専門家もいないし、ただ人々を追っているだけで、勇敢なほど何の定式もありません。この映画はその意味でイームズとつながっています。

本作の後に監督された『人生はビギナーズ』には、このドキュメンタリー制作は影響を与えましたか?

自分のやっていることの中で、ドキュメンタリー制作から学ぶことが一番多いですが、本作のように人の内面や、人はどのように物事を決めるのか、人はどのように生きるのかについて迫るものである場合は特にそうです。自分の映画はどれも本質的にそういう内容であって、『人生はビギナーズ』も完全にそうです。

だから『うつの話』からは映像を通して人を理解することの訓練になりましたが、出演者全員がとりわけ優しい人たちだったので、より大切な作品になりました。このドキュメンタリーを編集している間、朝は『人生はビギナーズ』の脚本を書いていたので、この2本はいとこや兄弟みたいなものです。具体的にどう影響し合ったかはわからないけれど、僕のすべての映画に共通しているのは、自分で作った檻から抜け出して、真の自分になろうと、ハッピーで自由になろうともがいている人たちの話です。

【プロフィール】
マイク・ミルズ。1966年生まれ。カリフォルニア州サンタ・バーバラ出身。高校を卒業後、ニューヨークのアート・スクールへ入り、次第にグラフィック・アーティストとして頭角を現し、90年代のニューヨーク・グラフィック・シーンの中心人物となる。またミュージシャンのアルバム・デザインやミュージック・ビデオを制作した。ジム・ジャームッシュの影響を受け、映画を撮り始める。90年代末、友人であったスパイク・ジョーンズとソフィア・コッポラの紹介で、ローマン・コッポラとディレクターズ・ビューロー社を設立。ナイキやアディダスなどのCMや、エール、モービーといったミュージシャンを題材にしたドキュメンタリーを手がけながら、長編映画監督デビュー作「サムサッカー」を発表。サンダンス映画祭で評価され映画監督としても注目を集める。長編2作目となる「人生はビギナーズ」では、自身の父親との関係を題材にオリジナルの脚本を執筆。「社会のアウトサイダー」が一貫したテーマ。

【作品概要】
マイク・ミルズのうつの話
(Does Your Soul Have A Cold? 84分/アメリカ/2007年/英語字幕付)
公開日:2013年2013年10月19日(土)
監督:マイク・ミルズ
撮影:ジェイムズ・フローナ、D.J.ハーダー
編集:アンドリュー・ディックラー
制作:カラム・グリーン、マイク・ミルズ、保田卓夫
出演:タケトシ、ミカ、ケン、カヨコ、ダイスケ

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